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「陛下?」

 人間界の絵本なんかでも描かれる、顔は狼、上半身は筋肉に体毛が生えていて、下半身は人間の姿をした、いわゆる狼獣人が立っていたのだった。
 より獣らしさが増したものの、動きは優雅で平素の陛下とよく似ていて、紛れもなく本人だと認識させてくる。

「すまない、貴女にこの醜悪な姿を見せるつもりはなかったのに――」

「――醜悪……?」

 そんなことはない。
 これまで見た獣人達の中でも一際際立つ美しさを放っている。

「そんなことはありません――とっても綺麗で格好いいです」

 そんな風に告げると、陛下はキョトンとしていた。

「この姿が綺麗で格好いい? てっきり貴方が恐ろしがるのだと思って……」

「だから、なかなか会いにきてくださらなかったのですか? 私が嫌だとかそういう理由ではなくて?」

「俺が貴女を嫌う……? 決して、貴方が嫌だとかそんな理由ではない。それどころか、俺は初めて会った時から、ずっと貴女のことを――」

 相手がうつむく姿を見て、私の鼓動が高まっていく。

「だが、この姿、清らかな貴女から見れば、酷く恐ろしいものだろう?」

「いいえ、そんなことはありません……だって――」

 そうして、私は歓喜に震える胸を押さえながら相手に告げる。


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