【R18】身代わり令嬢は、銀狼陛下に獣愛を注がれる

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（最初は獣人と結婚だなんて怖いと思っていたけれど……実際に会ってみたら、獣人といっても、陛下の場合は人間とのハーフである半獣人……人間の身体に耳と尻尾が生えているだけで、人間の男性と結婚したようなものだった）

　立ち居振る舞いの優雅さはさることながら、武芸にも秀でており、戦場では自ら前線に立ち、騎士や兵達を鼓舞するだけでなく自身も敵を屠るのだという。
　しかも、凶悪だと噂されている獣人だったが、夫になった皇帝陛下は寡黙で静かな人だが凶暴さとは無縁の人物だった。
　気遣いだって完璧で、私に不自由がないかいつも気に掛けてくれる。

（彼自身には問題は全くない。贅沢だと思われるかもしれないけれど、唯一問題があるとすれば――）

　やはり政略結婚というべきか――あまり愛のある触れあいとは言いがたいことだった。
　人間と獣人では性欲だって違うのかもしれないが、夜の営みは月に数回と淡泊なものだったのだ。
　それを裏付けるかのように――夫には獣人の想い人がいたのだと侍女達が噂しているのを聞いてしまった。

（政略結婚だったし仕方がないけれど……私はせっかくだから、陛下がどんな人なのかちゃんと知って仲良くしたい……誰も知らないこの国で唯一頼れる人なのだから……だけど、陛下はまだ想い人のことを愛していらっしゃるのかしら？）

　だから、こんなにも彼は私に触れてこないのだろうか――？

　なんだか切なくて胸がきゅうっと疼く。

「それに陛下は――初めてお会いした獣人さんではなくって――」

　脳裏に幼い頃の思い出が閃く。

　同時に、彼に愛されたいという思いが内から泉のごとく湧き出てこようとする。

　そんな気持ちを紛らわすかのように、私は急いで窓を閉めると、もう冷たくなったベッドの上に戻って一人寂しく夜を過ごすのだった。