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しおりを挟む閉ざされた扉を黙って見ていると、先ほどまでの熱は一気に冷めていく。彼が立ち去った後、格子のかかった扉を開くと、さらに冷たい風が流れ込んできた。
「陛下……ファング様……」
近年、人間国と獣人国は険悪な仲だった。
その両国の和平のため、人間の女性が獣人国の皇帝陛下の元へと嫁がされることになったのだ。
最初は私の妹が嫁ぐという話になっていたのだけれど――。
『すまない、僕は君の妹のことを愛してしまったんだ』
婚約者だった王太子殿下から、おてんばな君と違って大人しくて優しい妹を獣人国に送りたくないと言われてしまい、婚約破棄されたばかりだった。
血の繋がらない継母からは――。
『妹の代わりに姉である貴女が嫁ぎなさい。王太子殿下の義理姉という身分でちょうど良いから。それに貴女はおてんばだったから、昔、誘拐されかけて獣人に助けられたことがあるそうじゃない? ちょうど良いのではなくて?』
――と言われてしまった。
そうして――王家の養子になって名ばかりの姫になって、獣国へと輿入れすることになったのだ。
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