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ケンダルside
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王城の廊下で、オデッセイとアーサーが仲睦まじく喋っていた。
そんな二人を見て、ケンダルは愕然として、身動きがとれなくなった。
「オデッセイも、アーサーのことが……?」
ケンダルの胸の内を焦燥が襲う。
『ケンダルは、一番強くてカッコいいから……』
ふと、頭の中に、子どもの頃のオデッセイの言葉が浮かんでは消える。
(アーサーがいる以上、俺は一番強くてカッコいい奴じゃなくなった……オデッセイが好きなのは、きっと一番強くてカッコいいやつで……絶対に、今の俺じゃなくて……)
ガラガラと自分自身のアイデンティティが壊れていく音が聞こえた。
もう、自分は一番強くてカッコいい男じゃない。
(オデッセイ、お前は……お前だけは……)
これまで、他の令嬢たちがアーサーに対してきゃあきゃあ歓声を上げていても気にならなかったのは……
どれだけアーサーがケンダルよりも上を行っていたとしても……
それでも、ケンダルが自分自身を保っていられたのは……
――自分だけが、自分こそが、オデッセイを護ることができる。
そんな自負があったからで……
彼女のそばにいることが出来ない自分に、どれだけの価値があるのだろうか?
彼女を失ったのだとしたら……
彼女なしの人生など、考えたこともなかったのに……
蟻走感が襲ってきて、耐えるべく、胸の前の衣服をぎゅっと握った。
もう一度、オデッセイの姿を見る。
彼女には、自分だけを見てほしい。
他の男と喋らないでほしい。
自分以外を隣に立たせないでほしい。
子どもじみた独占欲と焦りとで頭がおかしくなってしまいそうで……
その時、ケンダルはどうして自分がそんな感情を抱いてしまうのか気づいてしまった。
気づきたくなかった……
「俺は……オデッセイのことが……」
ドクンドクンドクン。
……好きだ。
身体の内側から想いが溢れ出していく。
……好きなんだ。
自覚したら、ダメだった。
好きで好きで好きで、たまらく好きだ。
どうしようもなく……
彼女が自分の全て。
彼女がいたから、これまで周囲からアーサーと比べられて苦しい思いをしても、耐えられたのに……
「俺は……」
だけど、どうして気づいてしまったんだろう。
気づいた途端、苦しくなった。
きっと今自分が抱いている想いは、アーサーがいる以上は叶わないのだ。
オデッセイが結ばれる相手は自分なんかじゃない。
苦しい。
苦しくてたまらない。
「……俺じゃあ……」
ダメなんだ。
気付いてしまって……
……ケンダルの心はそこで砕け散ってしまった。
自分の気持ちを自覚した途端、苦しくなって、それが嫌で……
ケンダルはその場から走って逃げる。
(今日の俺、逃げてばっかで、マジでダサいな……)
すると……
「ケンダル、待ってくださいませ!」
オデッセイがケンダルのことを追い掛けてきていた。
そのまま逃げれば良かったのに、未練たらしいので、立ち止まってしまった。
ちらりと背後を振り向く。
アーサーと話していたからか、走ってきたからか、オデッセイは頬を朱に染めていた。
「ケンダル、もう私たち、大人になったでしょう? 子どもの時、あなたが言ってくれた……広い世界をどうか私に……」
……もしも昨日言われていたら、もっと答えは違ったかもしれない。
だけど……
「そんなの、アーサーに言えよ……」
「え?」
ケンダルはオデッセイに背を向けたまま、拳をぎゅっと握りしめる。
「そもそもだ、俺とお前じゃあ身分が違うんだよ。俺はまあ、そこそこ剣技に優れてたけど、アーサーほどは強くないし……俺じゃあ、お前を遠い海の向こうまでは連れてやってはやれない」
吐き捨てるように、それだけ告げると、その場を去ったのだった。
そんな二人を見て、ケンダルは愕然として、身動きがとれなくなった。
「オデッセイも、アーサーのことが……?」
ケンダルの胸の内を焦燥が襲う。
『ケンダルは、一番強くてカッコいいから……』
ふと、頭の中に、子どもの頃のオデッセイの言葉が浮かんでは消える。
(アーサーがいる以上、俺は一番強くてカッコいい奴じゃなくなった……オデッセイが好きなのは、きっと一番強くてカッコいいやつで……絶対に、今の俺じゃなくて……)
ガラガラと自分自身のアイデンティティが壊れていく音が聞こえた。
もう、自分は一番強くてカッコいい男じゃない。
(オデッセイ、お前は……お前だけは……)
これまで、他の令嬢たちがアーサーに対してきゃあきゃあ歓声を上げていても気にならなかったのは……
どれだけアーサーがケンダルよりも上を行っていたとしても……
それでも、ケンダルが自分自身を保っていられたのは……
――自分だけが、自分こそが、オデッセイを護ることができる。
そんな自負があったからで……
彼女のそばにいることが出来ない自分に、どれだけの価値があるのだろうか?
彼女を失ったのだとしたら……
彼女なしの人生など、考えたこともなかったのに……
蟻走感が襲ってきて、耐えるべく、胸の前の衣服をぎゅっと握った。
もう一度、オデッセイの姿を見る。
彼女には、自分だけを見てほしい。
他の男と喋らないでほしい。
自分以外を隣に立たせないでほしい。
子どもじみた独占欲と焦りとで頭がおかしくなってしまいそうで……
その時、ケンダルはどうして自分がそんな感情を抱いてしまうのか気づいてしまった。
気づきたくなかった……
「俺は……オデッセイのことが……」
ドクンドクンドクン。
……好きだ。
身体の内側から想いが溢れ出していく。
……好きなんだ。
自覚したら、ダメだった。
好きで好きで好きで、たまらく好きだ。
どうしようもなく……
彼女が自分の全て。
彼女がいたから、これまで周囲からアーサーと比べられて苦しい思いをしても、耐えられたのに……
「俺は……」
だけど、どうして気づいてしまったんだろう。
気づいた途端、苦しくなった。
きっと今自分が抱いている想いは、アーサーがいる以上は叶わないのだ。
オデッセイが結ばれる相手は自分なんかじゃない。
苦しい。
苦しくてたまらない。
「……俺じゃあ……」
ダメなんだ。
気付いてしまって……
……ケンダルの心はそこで砕け散ってしまった。
自分の気持ちを自覚した途端、苦しくなって、それが嫌で……
ケンダルはその場から走って逃げる。
(今日の俺、逃げてばっかで、マジでダサいな……)
すると……
「ケンダル、待ってくださいませ!」
オデッセイがケンダルのことを追い掛けてきていた。
そのまま逃げれば良かったのに、未練たらしいので、立ち止まってしまった。
ちらりと背後を振り向く。
アーサーと話していたからか、走ってきたからか、オデッセイは頬を朱に染めていた。
「ケンダル、もう私たち、大人になったでしょう? 子どもの時、あなたが言ってくれた……広い世界をどうか私に……」
……もしも昨日言われていたら、もっと答えは違ったかもしれない。
だけど……
「そんなの、アーサーに言えよ……」
「え?」
ケンダルはオデッセイに背を向けたまま、拳をぎゅっと握りしめる。
「そもそもだ、俺とお前じゃあ身分が違うんだよ。俺はまあ、そこそこ剣技に優れてたけど、アーサーほどは強くないし……俺じゃあ、お前を遠い海の向こうまでは連れてやってはやれない」
吐き捨てるように、それだけ告げると、その場を去ったのだった。
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