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ケンダルside
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しおりを挟むそれからのケンダルは、努力もするようになった。
オデッセイに見合う男になりたかったのだ。
元々強かったけど、努力をしたら、もっと強くなった。
彼女の遊び相手としての役目も十分だし、将来的には彼女の護衛騎士になる未来も約束されている。
とにかく順風満帆な日々だった。
「オデッセイ、お前はいつもキラキラしてるな……!」
見た目だけじゃなくて、気合と根性もキラキラしている。
「な、なにを仰いますの……!」
一緒に夕暮れ時の空を眺めて以来、ケンダルはとにかくオデッセイを可愛がった。
オデッセイのことが可愛くて可愛くて仕方がなかった。
それに、自分のことを慕ってくれている彼女のことが、心底可愛かった。
そんなある時、オデッセイが思いがけないことを口にする。
「ねえ、ケンダル」
「どうした?」
「どうして、ケンダルは、そのままでも一番強くてカッコいいのですか……?」
「そのままでも一番強くてカッコいい……?」
ケンダルの胸の中でオデッセイの言葉が輝く。
「ええ、私と違って、そのままの自分なのに、ケンダルはカッコイイ……から」
オデッセイは恥ずかしそうに俯いた。
いつもは素直じゃないオデッセイの素直な言葉。
「私にとって……一番強くてカッコいいケンダルが私の護衛騎士になるなんて……すごく幸せ」
恥ずかしがる彼女の声が小さすぎて、前半がイマイチ聞こえなかった。
けれども、単純なケンダルのテンションはダダ上がりした。
(オデッセイも、一番強くてカッコいい俺が護衛騎士になる未来を望んでくれてるんだ……!)
その日、「一番強くてカッコいい」が、ケンダルのアイデンティティになったのだ。
それからというもの……
(オデッセイに見合う一番カッコよくて強い男に俺はなるんだ)
オデッセイから「一番」と言われて以来、ケンダルは何事も「一番」でありたいと強く思うようになっていた。
(そうだ、オデッセイに自慢して褒めてもらおう!)
そう思ったケンダルは開口一番、胸を張って自信満々に告げる。
「なあ、オデッセイ、俺は、令嬢たちに一番モテてるんだぜ!」
ケンダルが喜々として語り掛けたものの、オデッセイはものすごく不機嫌になった。
「たった一人の女性だけじゃなくて……全ての令嬢にモテたいのですか、ケンダルは?」
「ん? 女子にいっぱいきゃあきゃあ言われるの、わりと好きだしな」
「……」
オデッセイはますます不機嫌になった。
ケンダルとしては、なんとなく靄ついた。
(オデッセイに褒めてもらおうって思ってたのに……)
だけど、数日間、オデッセイが口を利いてくれなくなった。
この日以来、ケンダルはオデッセイの前では令嬢たちの話を避けるようにしたのだった。
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