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だが、あまりに力が強すぎて振り解くことが出来なかった。
それどころか抵抗しようとしても、ピクリとも動かなかった。
「俺はな……アーサーよりかは弱いって言われてるけど、国の中でも有数の騎士なんだぜ……お前に色々されても、抵抗しようと思えばどれだけだって出来たんだ」
「それは……」
「だから、お前を受け入れたのは……全て、俺の意志だ。お前だけを愛している、ずっと、ずっとだ」
彼が彼女の首筋に顔を愛おしそうに埋めてくる。
「あ……」
……お前だけを愛している。
ケンダルの言葉が胸にじんわりと滲みこんでくるようだ。
子どもの頃に夕陽を見た時に感じたように、オデッセイの心が焦がれていく。
じわじわと彼の想いが熱を帯びて、全身に広がっていくようだ。
「ですが、リーリアさんには『逆惚れ薬』を頼んだはずなのに……」
どうして、こんなことになったのだろうか?
「オデッセイは『逆惚れ薬』のことを、『特別な体液』の持ち主を『惚れるの逆、つまるところ、嫌う』作用があると勘違いしてたようだが……」
ケンダルが続ける。
「『逆惚れ薬』って、惚れ薬の逆で、嫌い薬ってわけじゃあなくて……いわゆる『惚れられ薬』ってことだ……『惚れ薬』と何が違うんだよってな……」
「ええっ……!?」
オデッセイは悲鳴を上げた。
惚れ薬の場合、嗅いだ相手が「特別な体液」の持ち主に「惚れる」作用がある。
逆惚れ薬の場合、嗅いだ相手が「特別な体液」の持ち主に「惚れられる」作用がある。
つまり、今回の場合、オデッセイが「特別な体液」の持ち主ケンダルに惚れられるということだったが……
「薬が直接作用を及ぼしたのは、私相手で……」
「つまるところ、オデッセイが俺から愛されてるって、自信満々になる薬だったわけだ」
だから、あんなにも何をしても許される気分になったというのか……
「……うう、穴があったら入りたい……」
頭を抱えていたオデッセイだったが、やけにケンダルが『惚れ薬』について詳しいのが気になった。
「それにしても、やけに『惚れ薬』について詳しいですね、ケンダル」
「え? ああ、まあな、アーサーとリーリアちゃんに話を聞いてたしな……」
彼が枕の下にさっと何かを隠す。
(割れてない試験管……? 私のものとは別……?)
だけど、彼が隠したものが何かは分からなかった。
そうして、代わりに何か黒い箱を取り出す。
ケンダルがオデッセイの頬にちゅっと口づける。
「……なあ、オデッセイ、お前も、もしかして、俺のことが好きなんだろう?」
ケンダルは意地の悪い笑みを浮かべている。
「な、ななな、なにを仰っているの……!? そ、そんなのっ……言わなくても分かるでしょう?」
それどころか抵抗しようとしても、ピクリとも動かなかった。
「俺はな……アーサーよりかは弱いって言われてるけど、国の中でも有数の騎士なんだぜ……お前に色々されても、抵抗しようと思えばどれだけだって出来たんだ」
「それは……」
「だから、お前を受け入れたのは……全て、俺の意志だ。お前だけを愛している、ずっと、ずっとだ」
彼が彼女の首筋に顔を愛おしそうに埋めてくる。
「あ……」
……お前だけを愛している。
ケンダルの言葉が胸にじんわりと滲みこんでくるようだ。
子どもの頃に夕陽を見た時に感じたように、オデッセイの心が焦がれていく。
じわじわと彼の想いが熱を帯びて、全身に広がっていくようだ。
「ですが、リーリアさんには『逆惚れ薬』を頼んだはずなのに……」
どうして、こんなことになったのだろうか?
「オデッセイは『逆惚れ薬』のことを、『特別な体液』の持ち主を『惚れるの逆、つまるところ、嫌う』作用があると勘違いしてたようだが……」
ケンダルが続ける。
「『逆惚れ薬』って、惚れ薬の逆で、嫌い薬ってわけじゃあなくて……いわゆる『惚れられ薬』ってことだ……『惚れ薬』と何が違うんだよってな……」
「ええっ……!?」
オデッセイは悲鳴を上げた。
惚れ薬の場合、嗅いだ相手が「特別な体液」の持ち主に「惚れる」作用がある。
逆惚れ薬の場合、嗅いだ相手が「特別な体液」の持ち主に「惚れられる」作用がある。
つまり、今回の場合、オデッセイが「特別な体液」の持ち主ケンダルに惚れられるということだったが……
「薬が直接作用を及ぼしたのは、私相手で……」
「つまるところ、オデッセイが俺から愛されてるって、自信満々になる薬だったわけだ」
だから、あんなにも何をしても許される気分になったというのか……
「……うう、穴があったら入りたい……」
頭を抱えていたオデッセイだったが、やけにケンダルが『惚れ薬』について詳しいのが気になった。
「それにしても、やけに『惚れ薬』について詳しいですね、ケンダル」
「え? ああ、まあな、アーサーとリーリアちゃんに話を聞いてたしな……」
彼が枕の下にさっと何かを隠す。
(割れてない試験管……? 私のものとは別……?)
だけど、彼が隠したものが何かは分からなかった。
そうして、代わりに何か黒い箱を取り出す。
ケンダルがオデッセイの頬にちゅっと口づける。
「……なあ、オデッセイ、お前も、もしかして、俺のことが好きなんだろう?」
ケンダルは意地の悪い笑みを浮かべている。
「な、ななな、なにを仰っているの……!? そ、そんなのっ……言わなくても分かるでしょう?」
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