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第7章 2年後、3人は家族になった

36-4※

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 総悟の瞳に光が宿る。

「だけど、大人になった君は、小学生の頃とは雰囲気が変わっていた。もしかしたら、俺のことなんて覚えていないかもしれない。性格だって変わっているかもしれない。そんな風に思っていたけれど……やっぱり桃花ちゃんは桃花ちゃんのままだったんだ。自分でも自覚なく君に惹かれていっていた」

 総悟が続ける。

「だけど、桃花ちゃんが妊娠したら、また姉さんみたいになってしまうんじゃないか、頭の中を君が占めれば占めるほど、そんな風に思い込むようになっていった。万が一でも妊娠させないようにしないといけない。そんな風に思って、君から逃げた。怖かったんだ、君を失うのが……だけど、結局、それは逃げでしかなかったんだ」

 桃花は黙って総悟の想いを聞き続けた。

「ちゃんと君の言動に気を配ってあげないといけなかった。なのに、俺は自分の気持ちを守る方を優先してしまったんだ。そりゃあ、俺のそばから逃げたくなるよね。ごめんね、桃花ちゃん、おかしな話をしちゃって」

 寂し気に総悟が微笑んだ。

「いいえ、総悟さんの気持ちが聞けて嬉しかったです」

「嬉しいの? ダメな奴だなって思わなかった?」

 桃花は首を横に振った。

「そんな風に嫌だったのに、獅童と仲良くなろうとしたり、総悟さんなりに頑張ってくださって、すごいです」

「桃花ちゃんにそんな風に言われちゃうと、俺としても嬉しいよ」

 総悟の笑顔がどこか儚くて、十二年前に初めて出会った時のことを思い出した。

「改めて君に伝えたいことがある」

 そうして、総悟が枕の下から黒い箱を取り出す。
 先日プロポーズされた際にも手渡されたダイヤの指輪だった。

「どうか俺の妻になってほしい」

 桃花の鼓動が自然と早くなっていき、心に火が灯るようだ。
 彼が彼女の左手の薬指にそっと指輪を通した。
 前回は獅童のことがあって突っぱねてしまったけれど……今度はストンと受け入れられた。

(総悟さんに返事をしなきゃいけないのに……)

 けれども、桃花は感極まって返事をすることができなかった。

「大丈夫、無理して返事をしなくて良いよ」

 そっと彼の長い指が桃花の頬にかかった髪をそっと耳にかけてくる。

「ねえ、こんな俺だけど、君のことが一番大事なんだ、桃花ちゃん」

「総悟さん……」

 そうして、桃花の唇に総悟の唇が重なった。
 柔らかな感触だったけれど、彼女の鼓動を早くさせた。

「ねえ、もう一度だけ俺に好機が欲しい。俺が君のことをどれだけ大切なのかを伝えたい……そうして、どうか君が俺をどう思っているのか教えてほしいんだ、桃花」

 桃花は瞼を伏せると、そっと開いて、相手をまっすぐに見据えた。

「はい」

 どちらからともなく身体を絡ませ合う。
 こうして、二人は両想いになってから初めて結ばれることになったのだった。

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