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第7章 2年後、3人は家族になった
36-1 プロポーズをもう一度※
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嵯峨野との一件の後、火事の現場にいたこともあり、病院を一度受診して異常がないことを確認した。
そうして、桃花と獅童は総悟に連れられて、とある閑静な住宅街の一角に辿り着いた。
総悟の車が停車したのは、どうにも見知らぬ屋敷の前だった。
二階堂会長邸のように門扉が自動で開く。
助手席に座る桃花は運転席に座る総悟に尋ねた。
「こちらの屋敷は?」
「俺たちの新居だよ」
「こんな豪邸も所持されていたんですか?」
「最近ね。桃花ちゃんを親父のところに連れて行った後、急ピッチで建ててもらうように頼んだんだ」
「はい……?」
「豊臣秀吉の一夜城の話があるじゃん? あれって本当に可能なんだなって感心したよ」
総悟の家を訪ねたのは二週間ぐらい前ではなかっただろうか?
察するに……持て余す財産で建築施工主に対して無理難題を主張して豪邸を建てたということだろう。
総悟の実家もすごいと思ったが、負けず劣らずの大きな邸宅である。違いはと言えば、和風ではなく現代建築だということだろうか。
桃花が車から降りると、疲れて眠ってしまっている獅童を抱っこして、庭先を歩いた。ちょうど梅雨時期だからか、紫陽花が綺麗なグラデーションを彩っていて、ところどころに菖蒲の花が凛として咲いていた。
(すごい、総悟さんのご実家みたいに綺麗な花園が広がっているわ)
正面玄関には愛らしいブーケとイタリック文字の表札が飾られている。
(二階堂……総悟、桃花、獅童……三人の名前がご丁寧に記載されてるわね)
もう勝手に入籍されていてもおかしくはない気がして、ここ数日間に何かおかしな書類にサインしなかったかどうか記憶を思い返してしまった。
「さあ、中にどうぞ」
正面玄関の中に入って左側には、蔦が描かれた陶磁器の花瓶に薔薇の花が飾ってあった。
フローリングはピカピカにワックスで磨き上げられていて塵一つ落ちていない。
頭上を見上げると、照明も鮮やかな光を放っている。
「昨日の内に俺が掃除したんだ。綺麗でしょう?」
「え……? 一人で?」
「うん、もちろん、さあ、おいで桃花ちゃん」
そうして、誘われたのは一階の部屋だった。
20畳ぐらいはありそうな洋室の中には、アスレチックジムや積み木に電車や車の玩具が置かれている。そうして、壁際に豪華な子ども用のベッドが一台設置されていた。
どうも観察できるようにモニターが設置してあるようだ。大きな体動があれば屋敷中でアナウンスが鳴って教えてくれる仕組みになっているらしい。
(最先端ね。だけど、獅童と一緒に眠れば良いだけなのに、どうして隔離しようとしているのかしら?)
桃花は頭を捻った。もしここに獅童を寝せるにしても、起きる前には姿を現わしてあげないと可哀そうな気がした。
そうして、桃花と獅童は総悟に連れられて、とある閑静な住宅街の一角に辿り着いた。
総悟の車が停車したのは、どうにも見知らぬ屋敷の前だった。
二階堂会長邸のように門扉が自動で開く。
助手席に座る桃花は運転席に座る総悟に尋ねた。
「こちらの屋敷は?」
「俺たちの新居だよ」
「こんな豪邸も所持されていたんですか?」
「最近ね。桃花ちゃんを親父のところに連れて行った後、急ピッチで建ててもらうように頼んだんだ」
「はい……?」
「豊臣秀吉の一夜城の話があるじゃん? あれって本当に可能なんだなって感心したよ」
総悟の家を訪ねたのは二週間ぐらい前ではなかっただろうか?
察するに……持て余す財産で建築施工主に対して無理難題を主張して豪邸を建てたということだろう。
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桃花が車から降りると、疲れて眠ってしまっている獅童を抱っこして、庭先を歩いた。ちょうど梅雨時期だからか、紫陽花が綺麗なグラデーションを彩っていて、ところどころに菖蒲の花が凛として咲いていた。
(すごい、総悟さんのご実家みたいに綺麗な花園が広がっているわ)
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(二階堂……総悟、桃花、獅童……三人の名前がご丁寧に記載されてるわね)
もう勝手に入籍されていてもおかしくはない気がして、ここ数日間に何かおかしな書類にサインしなかったかどうか記憶を思い返してしまった。
「さあ、中にどうぞ」
正面玄関の中に入って左側には、蔦が描かれた陶磁器の花瓶に薔薇の花が飾ってあった。
フローリングはピカピカにワックスで磨き上げられていて塵一つ落ちていない。
頭上を見上げると、照明も鮮やかな光を放っている。
「昨日の内に俺が掃除したんだ。綺麗でしょう?」
「え……? 一人で?」
「うん、もちろん、さあ、おいで桃花ちゃん」
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どうも観察できるようにモニターが設置してあるようだ。大きな体動があれば屋敷中でアナウンスが鳴って教えてくれる仕組みになっているらしい。
(最先端ね。だけど、獅童と一緒に眠れば良いだけなのに、どうして隔離しようとしているのかしら?)
桃花は頭を捻った。もしここに獅童を寝せるにしても、起きる前には姿を現わしてあげないと可哀そうな気がした。
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