上 下
192 / 220
第7章 2年後、3人は家族になった

最終話ー1

しおりを挟む
 嵯峨野との事件の後、数か月が経った。
 彼は医師の診察後に心神喪失と判断され、現在は刑務所病院で過ごしている。徐々に回復しているようで、退院の目途が経ち次第、法で裁かれることになるだろう。
 嵯峨野機器社長による不祥事だったが、嵯峨野グループ自体が二階堂グループの傘下に入ったばかりだった。かなりの大騒動になりそうだったが、嗣子との話や会社のスキャンダルは避けたいということもあり、嵯峨野の一件は公にならないように、総悟が緘口令を出したようだ。
 刑務所を出所後に彼がどうなるかは分からないが、ちゃんと罪を贖ってから社会復帰を果たしてほしいと思う。

(総悟さんも『桃花ちゃんが帰って来てなかったら、俺もああなってたかもしれないね』と話していたわね)

 総悟は嵯峨野のことを元は慕っていたようだし、まだ胸中は複雑だろう。
 もちろん、嵯峨野と大学時代に同じゼミで過ごしていた竹芝も沈痛な面持ちを浮かべていた。

『嗣子ちゃんの一件があるまでは、武雄くんはすごく好青年だったんですよ。あの交通事故で人生が大きく変わってしまいましたね。嗣子ちゃんが生きていたら、きっと子どもと三人で楽しく暮らしていたでしょうからね』

 そうして――
 嵯峨野の一件からしばらく経った頃、京橋阪子が桃花と総悟の前に姿を現わした。
 竹芝は覚えていないようだったが、どうやら阪子は、嵯峨野・嗣子・竹芝・京香と同じ大学の同級生だったようだ。

『私の母が乗っていた車が、梅小路さんのご両親の車にぶつかってしまいました。そうして、二階堂社長のお姉さんのお車まで巻き込んでしまいました』

 阪子は、母が起こした事故に自責の念をずっと感じていたそうだ。
 大学の同窓会でたまたま武雄と顔を合わせた。彼に対して罪悪感があった阪子は、彼の持ちかけてきた話に協力することにしたのだそうだ。
 だが、実際に二階堂商事に企業スパイのような形で侵入した際に、どうやらおかしいことに気付いたようだ。
 さらに、総悟の専属秘書として桃花の姿を見つけてしまい、いよいよおかしいと思ったようで、獅童の子ども園の前で待ち伏せしていたのだという。
 どうやら話を聞くに、嗣子のことを愛していた武雄が阪子に手をつけることは一切なかったらしい。

『ずっと、梅小路さんのご両親に申し訳ないと思っていました。お金に余裕がなかったし、結局事故のお金も梅小路さんたちのお家には支払えず……』

 桃花は阪子に対してきっぱりと答えた。

『やっぱり十二年経っても、心のどこかで割り切れない自分がいます、許せないと思う気持ちがどこか燻ぶっています。両親が生きていたらって、いつも思います。だけど、事故を起こしたのは、阪子さんでなく、阪子さんの親御さんです。だから、どうかご自身の人生を歩んでください』

 阪子の瞳に涙が浮かぶ。

『本当にごめんなさい。ありがとうございます』

 それだけ言うと、阪子は桃花と総悟に頭を一度だけ下げて、どこかに去って行った。

(阪子さんを恨んだところで、私の両親は帰ってこないもの。代わりにおじいちゃんやおばあちゃんが私を大事にしてくれたし、それに……)

 桃花には総悟と獅童が一緒なのだ。

(私には大事な家族がいるのですもの)

 あれから桃花と総悟との結婚話は今までが何だったのかというぐらいトントン拍子に進んだ。

(いよいよ今日は総悟さんとの結婚式)
 
 今日の結婚式が済めば、桃花と獅童も総悟の新居にお邪魔することになっている。
 桃花は鏡に映る自分を眺めた。
 髪はまとめあげ、桃の花が飾られた愛らしいカチューシャの下にチュールで出来たウェディングヴェールをつけている。
 胸元にはダイヤのペンダントがキラキラと光っている。
 ドレスはマーメイドラインのものにした。ストラップレスネックで、上半身からひざ下まではぴったりとしたデザインであり、ひざ下から裾にかけては人魚のひれのように広がっており、とても優美なデザインだ。

(総悟さんも準備は出来たかしら?)

 獅童は今頃五人の祖父母に囲まれて幸せに過ごしているはずだ。

「それでは新婦様、お時間です」

「はい」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

【R18】騎士団長は××な胸がお好き 〜胸が小さいからと失恋したら、おっぱいを××されることになりました!~

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
「胸が小さいから」と浮気されてフラれた堅物眼鏡文官令嬢(騎士団長補佐・秘書)キティが、真面目で不真面目な騎士団長ブライアンから、胸と心を優しく解きほぐされて、そのまま美味しくいただかれてしまう話。 ※R18には※ ※ふわふわマシュマロおっぱい ※もみもみ ※ムーンライトノベルズの完結作

若妻シリーズ

笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。 気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。 乳首責め/クリ責め/潮吹き ※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様 ※使用画像/SplitShire様

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...