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第7章 2年後、3人は家族になった
32-1 京橋阪子
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子ども園の近く、突然、京橋阪子が姿を現わした。
(総悟さんじゃなくて、私自身に用だなんて……しかも謝罪したいだなんて、どういうことなの?)
とはいえ、阪子の憔悴しきった表情を見ていたら、このまま放置したら道路に飛び出しかねない雰囲気を醸し出していた。
かといって、桃花に対して何かをしでかしたりしたわけでもないので、このまま警察に連れて行ったとしても対応してはもらえないだろう。
(帰ろうとしても帰してはくれない雰囲気があるわね)
子ども園から少しだけ歩いた先に、遊具の数が少ない公園がある。
最近は日照時間も長くなってきている。暗くなる前の公園ならば、まだ人気もあるし、開けた場所で話せば安全に違いない。
桃花は阪子を見据えて、きっぱりと告げた。
「獅童を寝せる準備があるので、少しだけならば……」
「ありがとうございます」
そうして、桃花は獅童を抱えながら、微笑を浮かべる阪子を公園へと誘った。
「どうぞ、こちらにお願いいたします」
公園の中央付近に位置する遊具の近くにあるベンチに、桃花と阪子は腰かけてから話を聞くことになった。
子どもに聞かせて良い話なのかが分かりづらかったので、獅童には近くの砂場で砂いじりをして過ごしてもらうことになった。雨が降ったりやんだりしていたので、砂が濡れていて感触がいつもと違うから面白いようだ。
「それで、お話というのは何なのでしょうか?」
桃花が問いかける。
阪子は、しばらく逡巡した後、ゆっくりと口を開いた。
「実は、梅小路さんに対して謝らないといけないことがあります」
「私に対して謝らないといけないこと、ですか?」
「ええ」
阪子は、地面を見ながら俯く。
「二階堂社長の子どもを妊娠したと話したでしょう?」
「はい、確かにそう仰っていましたね」
彼女はぽつぽつと告げた。
「私が二階堂社長のそばで秘書として働いていたのは数か月前になります」
「社長からもそのように伺っております」
総悟本人からもそのように聞いていたので、桃花は心の中で得心した。
「私には実は他の企業に勤める交際相手がいました。彼から派遣されて、二階堂商事の内部事情を探るために、二階堂社長の専属秘書として雇ってもらうことにした経緯があったのです」
「え?」
つまり、阪子は交際相手の依頼で、二階堂商事で働いていたようなのだ。
いわゆる企業スパイというやつだろう。情報を横流しにするために派遣されていたようだ。
「今はそういった人物に対しての取り締まりが厳しいはずです。そんなリスクを冒してまで、二階堂商事で働いていただなんて……阪子さんは交際相手の男性のことをすごく愛していらっしゃったのですか?」
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「私に対して謝らないといけないこと、ですか?」
「ええ」
阪子は、地面を見ながら俯く。
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