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第6章 2年後、3人で家族になる
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しおりを挟む「二階堂会長」
総悟の父親である、二階堂グループ会長の二階堂総一朗だった。
二年前と出で立ちは変わっておらず、白くてふさふさした髭を蓄えている。
目つきの鋭さや厳しさは相変わらずだ。会社で見かける時とは違って、渋色の和装を身に纏っている。
桃花を総悟の元に専属秘書に戻してくれた恩人でもある。しかも、多額の給与を条件としてだ。
(総悟さんの話だと、私のことを心配してくれているみたいだし……)
たった一度会っただけだったが、二階堂会長は社員に対して温情の厚い人物に違いない。
桃花がまるで面接の時のようにドキドキ緊張していると、会長から声がかかった。
「梅小路君、そちらに」
桃花は緊張しつつも、獅童と一緒にその場でしゃがみ込んで正座をすると指を揃えて挨拶をする。
「このたびは……」
何といえば良いのだろうか。
悩んでしまって、それ以上話すことはできない。
(総悟さんに無理やり連れ出されただけだから、なんて答えて良いものか……それに冷静になって考えてみれば……)
二階堂会長は、総悟とは違って、決まりなどに厳格な人だった。
破格の待遇で専属秘書に戻してもらったわけだが、婚前に妊娠した挙句に父親である総悟の許可なく獅童を産んだことは、それとはまた別の話だ。
(獅童を勝手に産んだって、責めてこられるかもしれない)
悪い想像が膨らんでしまい、桃花の胃がぎゅっと縮み上がるようだ。
すると……
「梅小路さん、どうか顔を上げてほしい。総悟から事情は聴いている、大変だったね」
「……っ……!」
二階堂会長の口調は大変穏やかなものだった。
先ほどまでの厳しい視線はどこへやら、優しい目つきで桃花を……いいや、桃花の隣に座っている獅童の姿を眺めていた。
二階堂会長が、膝に手を付きながら立ち上がると、ゆっくりと獅童の元へと歩んでくる。
獅童はあまり人見知りしない性格だからか、祖父に接近されても、キョトンとしているだけだった。
「どれ、儂にも孫の顔をよく見せてもらいたい」
そうして、祖父である二階堂総帥が、獅童の脇を抱えて、高い高いをした。
視線が高くなって嬉しいのか、獅童はきゃっきゃっとはしゃいでいる。
祖父と孫の交流を見て、桃花の心は弾んだ。
(二階堂会長に獅童が受け入れてもらえて良かった)
その時、総悟が二階堂会長を苦虫を噛み潰したような表情で見ていることに気付く。
「なんだ、総悟?」
「別に……」
「ああ、もしかして、お前はまだ抱っこしとらんかったのか、こんなに可愛いのに」
「仕方ないだろ」
総悟は憎々し気な表情を浮かべていた。
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