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第6章 2年後、3人で家族になる
27-1 二人とも逃がさない
しおりを挟む桃花が総悟に連れて来られたのは、彼の生家である「二階堂家」だった。
獅童を抱っこした桃花は圧倒されていた。
(武家屋敷みたいな由緒ある建物ね……!)
そんな風に思わせてくる和風住宅だったのだが、セキュリティは最新式のようで、総悟が玄関の前に立つとガラガラと門が自動で開いた。
自宅玄関とは人力で開けるものだという常識の中で生きていた桃花は、自分の常識だけでは測れない世界が日本の中にもあるのだなと感心した。
「会社やお店の玄関だって自動扉でしょう? まあ、うちのは顔認証式だけどね。これから先、何回も遊びに来るんだから、ぜひ慣れてほしいな」
総悟に考えを当てられてしまい、桃花はちょっぴり悔しかった。
「……さすがに、理由もないのに二階堂社長のお家にお邪魔するわけにはいきません」
「まあ、確かに俺の家でもあるけど、親父の……二階堂総一朗の家でもある。親父も桃花ちゃんのことは気にしているみたいだったし、良かったら親父に顔を見せてやってほしい」
総悟が大型犬がねだってくるような表情を見せてきた。
(うっ……確かに二階堂会長には色々お世話になっているけれど、まだ直接御礼を伝えることは出来ていない)
何かしてもらった相手にお礼も何も言わないなんて、そんな礼儀に反する行為はしたくない。
「でしたら、今回限りです。総悟さんの言うことを聞くわけじゃありません。二階堂会長に御礼を言わないと筋違いだと思ったからです」
桃花がツンとした態度をとると、総悟がクスリと笑みを零した。
「まあ、そういうことにしておいてあげるよ。さあ、おいで」
そうして、総悟の後に従って豪華な正面玄関をくぐり抜ける。
玄関ポーチは驚くべき広さで、桃花はまたしても圧倒されてしまった。
審美眼などは持ち合わされていないが、富士山の描かれた掛け軸に、巨大な花瓶が飾られている。
客用の清潔なスリッパに履き替えた後、塵一つなく整備された廊下を進む。まるで昔の御殿のような場所で、渡り廊下の周囲には池があった。
(まるで時代劇に出てくるお城のお庭みたいだわ)
庭先に敷き詰められた白い石はツヤツヤしていて、その辺りに転がっている石とは違って高級そうだ。
こんな場所が日本の一角にあるなんてと、桃花はついついキョロキョロしてしまった。
振り返った総悟が微笑んだ。
「桃花ちゃんの反応がいちいち可愛いな」
「え……!?」
突然可愛いと言われて動揺してしまう。
(そう言われれば、総悟さんは、ところかまわず私を褒めて回る悪癖のある人だったわね)
だいぶ総悟の調子は良さそうだ。
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