上 下
112 / 220
第5章 2年後、2人の子ども

23-4

しおりを挟む


 阪子が誰かに嘘を吹き込まれているかは別として、桃花はなんとなく総悟に対して腹が立ったままだだった。

(嘘か本当かは分からないけれど、自分の子どもを妊娠している可能性がある女性に対して、酷い態度だったわ)

 桃花はツカツカヒールを鳴らして社長室へと戻ると、総悟のデスクへと向かいバンっと両手で机を叩く。

「社長、ちゃんと彼女の話を聞いてあげてください!」

「はあ、なんで俺があんなくだらない嘘を聞いてあげないといけないの?」

 デスクに肘をついて頬杖をついている総悟が、これみよがしに溜息を吐いた。

「君は知らないかもしれないけど、過去の俺が遊んでいたのを知って、妊娠したとか出産したとかいう女は後を絶たないんだよ。正直うんざりしている。いちいち相手にしていられない。君もあんなのに真面目に相手する必要ないから」

「だけど、彼女は本当に妊娠していて……」

 阪子の様子が、なんだか昔の自分と重なるところがあって、桃花の気持ちが揺らいでいた。

「彼女は妊娠しているかもしれないが、残念ながら俺の子どもじゃあない。俺には子どもが存在することは絶対にない」

「どうしてそんなに断言できるのですか?」

「……もうこの話はやめにしよう」

 総悟は心底うんざりした表情をしていたが、桃花は獅童を実際に産んでいるので、どうしても納得がいかなくて食いついてしまった。

「ですが、もしも一夜限りだったとしても、子どもが出来ている可能性はゼロではなくて……!」

「だから、俺の子どもじゃないんだって、さっきから言ってるだろう……!?」

 先ほどまで穏やかだった総悟の表情が一気に険しくなった。
 桃花の背筋にゾクリとした感覚が走った。
 まずい、怒らせたかもしれないと思ったが、時すでに遅し。
 子どもの話がはじまったから、総悟の情緒が完全に乱れはじめていた。
 総悟が苦虫を嚙み潰したような表情で、呻くようにまくしたてる。

「君にずっとそばにいて欲しいって言ったくせに、本当のことを言わなかったのは卑怯だったと思うけど、俺には子どもができる可能性はほとんどない。十年前に俺は、今のままじゃ子どもは授かれないだろうって言われているんだよ」

「え……?」

 総悟の発言に桃花は衝撃を受ける。

「だから、そもそも俺に隠し子がいるはずがないんだ」

「そんな……はずは……」

「俺の身体だから、俺が一番分かっている。まったくゼロなわけじゃあないらしいが、できる可能性は限りなくゼロに近いんだ。だけど、俺としてはそれでちょうど良いと思ってる」

「どうして、ですか?」

 桃花は振り絞るように尋ねた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

腹黒ピアニストは年上メイドを溺愛する

季邑 えり
恋愛
 須藤景子は新しく雇われた玉造財閥の御曹司、洋平坊ちゃまの専用メイドとなった。我儘ばかり言う坊ちゃまを甘やかす景子に、洋平の欲望はエスカレートする。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

昨日、課長に抱かれました

美凪ましろ
恋愛
金曜の夜。一人で寂しく残業をしていると、課長にお食事に誘われた! 会社では強面(でもイケメン)の課長。お寿司屋で会話が弾んでいたはずが。翌朝。気がつけば見知らぬ部屋のベッドのうえで――!? 『課長とのワンナイトラブ』がテーマ(しかしワンナイトでは済まない)。 どっきどきの告白やベッドシーンなどもあります。 性描写を含む話には*マークをつけています。

処理中です...