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第5章 2年後、2人の子ども
23ー1 総悟の隠し子?
しおりを挟む月曜日の早朝だというのに……
二階堂商事の社長室では、仕事以外での重苦しい話題が部屋の中では繰り広げられていた。
(てっきり、二年間、私以外の女性とは何もなかったと思っていたのに……やっぱり、総悟さん、誰にでも手を出していたのね。やっぱり、獅童に父親がこんな人だって言うのは、大人になるまでは憚られるわね)
桃花は心の中で盛大な溜息を吐いた。
現在、社長室の中には、総悟と桃花以外にもう一人女性の姿があった。
名前は京橋阪子。
数か月前まで、二階堂商事社長となった総悟の専属秘書を務めていたのだと本人は話していた。
流麗な黒髪は腰まで届く長さだ。睫毛は長くクルンと天を仰いでいる。
桃花と比べると、すっと切れ長の瞳の持ち主であり、すっきりとした美人という印象だ。
上品でハリのある素材の黒いストレートワンピースを身に纏っており、上品な銀のショルダーバックを肩掛けしている。
元々がスレンダーだからか、黒地の衣服だからか、妊娠していると言われても見た目では分かりづらかった。
(それにしても、総悟さんが持っている写真の女性に似た雰囲気ね。まじまじと見たことがあるわけじゃないから、断定はできないけれど)
というよりも、同一人物なのではないかというぐらいに似ている気がする。
だとしたら、写真の女性本人なのだろうか?
そうであるならば、総悟にとっては大切な女性ということになるのだが、彼の表情は冷淡なものだった。
「それで? 京橋阪子さん、一応、君の言い分は聞いてあげるけど?」
総悟は高圧的な態度で相手に告げた。
彼女の傍に近づくことなく、デスクを挟んだ向こうにある椅子に深々と腰かけて膝を組んでいた。
椅子をクルリと一回転させて正面を向き直したが、やはり肘掛けに肘をついて憮然とした表情を浮かべている。
(自分の子どもを妊娠した相手かもしれないのに、態度が悪すぎる。傷つくのはいつだって女性側ね)
桃花は、またしても心の中で盛大な溜息を吐いた。
ふと、京橋阪子がポツポツと口を開きはじめる。
「二階堂社長、一晩だけでしたが、一緒に夜を過ごしたのをお忘れですか?」
すると、総悟が椅子を一旦止めて、大きな溜息を吐いた。
「一晩なら特に覚えがないよ」
桃花は思わず心の声が漏れ出てしまう。
「一晩ならって……呆れた」
独り言のつもりだったが、総悟が耳聡く拾っていた。
「桃花ちゃん、誤解だって、今のは言葉の綾で!」
「言い訳は聞きたくありません」
「一晩たりとも覚えがないよ。たった一晩だったとしても、相手が違ったら、ちゃんと覚えてるし」
「そういった話は受け付けておりません」
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