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第5章 2年後、2人の子ども
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しおりを挟むすると、寂し気な表情を浮かべた総悟が、缶コーヒーを両手に持ちながら地面に視線を落とした。
「桃花ちゃんもやっぱり結婚したら子どもが……欲しいよね?」
ドキン。
わりと繊細な内容だ。
恋人同士でしかしないような話だ。
そもそも今、桃花は総悟と恋人同士ではない。
だから、結婚した後の子どもの話に至っては、無視して良い質問だったかもしれないけれど……
(ちゃんと答えた方が良いわ)
けれども、どう答えても相手を傷つけてしまうような、そんな気がしてしまう。
(何を答えたとしても結果が同じなら、総悟さんに対して誠実でありたい)
「そう、ですね。女性なので、というよりも、私が男性だったんだとしても、自分の子どもは欲しいです」
すると、やはりというべきか、総悟の顔がくしゃりと歪んだ。
「そうだよね。そうか……どうして、女の人って、子どもができると、自分のことよりも子どものことを優先するようになっちゃうんだろう。それさえなければ……いいや、そうでなかったとしても、俺は……」
総悟が手にした缶コーヒーを握りつぶしかねない強さで握っていることに、桃花は気づいてしまった。だからこそ、言葉を選びながら続ける。
「二階堂社長、子どものことを優先するようになるのは、それは女性に限らず、男性もだと思うのですが……最近の育児は両親ともに協力し合っていることが多いようですし」
「……ああ、語弊があったよね。子どもがお腹にいる間の話だよ。人体の構造上、女性しか妊娠はできないでしょう?」
「それは確かにそうですね」
妊娠中の女性が子どもを最優先する。
桃花も獅童を妊娠している時はそうだった。
総悟は、どうやら妊婦に対して思うところがあるようだ。
「とはいえ、昔とは違って、妊娠出産は比較的安全で……」
桃花がそんな風に言おうとすると、総悟がまくしたてるように告げてきた。
「戦前なんかと違って、今の日本だと出産は安全だって言われているけど、それは大多数の人がそうだっていうだけで、少ない人数だけど、危険に晒されている女性も中にはいるんだ。いくら健康な女性だって、何がきっかけで、どう転ぶかは分からない」
総悟は青空を振り仰いでいた。
だけど、その瞳は空ではなく、どこか遠くを見ているようだ。
「二階堂社長」
「いいや、分かってるよ。全部俺の気持ちの問題なんだって。だけど、頭でどれだけ分かっていても、大事な人が危険に晒されるリスクが少しでもあるなら、避けたいんだよ」
そうして、総悟が桃花へと視線を戻す。
「ねえ、二年前、桃花ちゃんは俺と竹芝の会話を聞いていた。そうでしょう?」
「え?」
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