60 / 220
第3章 2年前、2人の別れの理由
13-3
しおりを挟む「総悟さんは……」
これまでたった数か月だが、総悟のことを見ていた。
だからこそ、嵯峨野の言う話を完全には真に受けることはなかった。
(総悟さんは嵯峨野さんが言うような人じゃないわ……)
ライバル会社の嵯峨野が適当な嘘を吐いている。
それで間違いないはずなのに、完全に否定することが出来ないでいた。
嵯峨野の虚飾の中にも真実が紛れているのではないか、そんな疑念が沸いてきて止まらない。
何が嘘で何が本当なのか分からない。
だけど、桃花の中で府に落ちる事実が、嵯峨野の話の中に一つだけあった。
(総悟さんはずっと私のことを知っているようだった。どうしてだか、一社員の私の両親の死因だって知っていた)
総悟の腕にある古傷。
あれは、桃花の両親の交通事故の際に負った傷なのではないか?
(人はやり直せるのかって、総悟さんが気にしていたことがあったわ……)
桃花の中で繋がってはいけないパズルのピースが繋がり合う。
(そうか、そうなのね……)
総悟が桃花に抱いているのは、愛ではない。
見殺しにした夫婦が残した、たった一人の子ども。
総悟が自分に抱いているのは……
(……同情)
両親を失った憐れな女性に施しをしてやったに過ぎないのだろうか?
疑念がどんどん湧いて消えてはくれない。
(二階堂商事はすごく良い会社。そんな会社に入職出来たのだって、総悟さんが私の存在に気付いたからに過ぎない。ある意味コネみたいなもので、実力で入社できたんじゃなかったんだわ……)
なんだか桃花は惨めな気持ちになった。
今までの努力が全て自分の力だけで成し遂げることが出来たものではなかったのだ。
一人で地に足付けて生きてきたつもりだったのに、全てが否定されたような気がして、足元から崩れてしまいそうだった。
(私は……なんだろう、何のために真面目に生きてきたんだろう……こんなことになってしまって、取り返しがつかない……)
総悟と竹芝のやり取りが頭の中に浮かんでいく。
総悟は桃花をそばにずっと置いておきたいと話していた。
だけど、彼には昔から大事に想っている女性がいるのだ。
だとしたら、桃花には妻の立場ではなく、愛人か何かとしてそばにいて欲しいということだったのだろうか?
(だったら、私は総悟さんの愛人としてこれから生きていけば良いの……?)
嵯峨野に掛けられた言葉のせいで気弱になってしまっているのか、どんどん悪い想像が膨らんでいく。
ただでさえ妊娠して情緒が不安定だった。
だんだんと気持ちが塞いでいく。
「きっと、総悟さんは、大事な女性の子どもしか欲しくないんだわ。だから、子どもなんて必要ないって話していて……私との子どもはそもそも欲しくなくて……」
その時……
230
お気に入りに追加
1,467
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる