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第3章 2年前、2人の別れの理由
12-1 総悟の本心?
しおりを挟む桃花が産婦人科を受診した翌日すぐには、総悟との時間をとることは出来なかった。
『子どもができた』
一言事実を伝えれば良いだけなのに、その一言を告げるのが怖くて仕方がなかったのだ。
(早く言わないといけないのは分かっている)
あれだけ吐き気がひどかったのだが、なんとなく調子が良い日が続いていたので、総悟から怪しまれることもなかった。
とはいえ、やはりこれまでに比べると集中力には欠けてしまう時があって、何をやるにも少しだけ時間がかかった。
(病気じゃないとはいえ、やっぱり本調子じゃないわね)
少しだけ残業になってしまった。
総悟は会議に参加したままだ。
本当は着いて行く予定だったのだが、秘書の同伴は不可だと言われた。
それにしれも、仕事に支障をきたすのは不本意だし、社会人としても早めに妊娠の報告はした方が良いのは間違いない。
「よし、完成したわね!」
そうして、文書ファイルを保存して、フォルダに格納する。
今日の業務はこれにて終了だ。
(せっかくだから総悟さんと会えたら良かったのに……)
桃花が帰り支度をはじめていると、ガチャリと部屋の扉が開いた。
「ふう、良かった、会議終わったよ。桃花ちゃんも、ちゃんと終わったみたいだね」
総悟は副社長室に戻ってくるなり、桃花のそばに近づいてくる。
「今日の君、最近の君にしては、調子が良さそうで良かった……さて、大丈夫かな?」
総悟の顔が近づいてきたかなと思うと、コツンと額と額がぶつかる。
「やっぱりちょっと微熱がある気がする。心配だな」
間近で顔を覗かれてしまい、彼女の胸がキュンと高鳴った。
総悟は桃花の体調不良を本当に心配しているようだ。
「ああ、そうだ。そういえば、桃花ちゃんから『話したいことがある』ってSMSメールで来てたけど、仕事がらみのこと? それともプライベートなこと?」
ドキドキする心臓の前で、桃花はきゅっと両手を組んだ。
「ええっと、どちらにもまつわる内容です」
「どちらにも?」
総悟は、見当がつかないのか、きょとんとした表情を浮かべて首を傾げていた。
「そのう……」
桃花が何を話すのかと待ってくれているようだ。
ご褒美を待つ犬のような表情に見える。
(勇気を出して伝えるのよ)
……とは思ったが、そもそも恋人を通り越して「子どもの父親になってください」と告白するのは重すぎやしないだろうか?
就職活動の際の面接の時よりも心臓がバクバク音を立てていた。
子どもの胎教に良くないのではないかと心配してしまう。
けれどもやはり、女は度胸だ。
「実はですね……!」
そうして、桃花が総悟に向かって声をかけようとしたところ……
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