上 下
46 / 220
第2章 2年前、幸せな2人

10-3※

しおりを挟む
 総悟の長い指が桃花の華奢な指に絡みはじめた。
 まるで恋人のように両手の指が重なり合った。
 総悟が桃花にゆっくりと口づけると離れると、懇願するような声音で囁いてくる。

「桃花ちゃん、ねえ、これから先もずっと俺だけだって誓ってくれる?」

「それは……」

 彼に突然請われてしまい、彼女は戸惑ってしまう。
 けれども、質問の内容がじわじわと頭の中に浸透してくる。
 噛み砕くと、総悟だけが一方的に得をするズルい契約事項ではないか?

「……私だけが、ですか?」

 桃花の瞳の光が揺れ動くと、総悟が縋るような瞳を返しながら続けた。

「……俺もこれから先、君だけだって誓うから」

(あ……)

 それは……

(総悟さんは私だけって約束してくれようとしているの?)

 総悟が顔をくしゃりとゆがめた。

「日頃の行いが悪いせいで……信用してもらえないかもしれないけど……ああ、俺は何言ってるんだろう、こんな気持ちになったの初めてだから、自分でも何をお願いしてるんだか分からない」

 普段はあんなに自信満々なのに、どことなく気弱な口調だ。
 桃花はクスリと笑った後、ゆっくりと頷いた。

「はい、わかりました」

 すると、総悟が太陽のように微笑んだ。

「良かった、女性に対してこんなこと言うの初めてだから緊張したよ」

「……初めて?」

「もちろん、桃花ちゃんは俺の特別だからさ」

 特別。
 その言葉の響きがあまりにも心地良くて…… 
 桃花の胸の内に薔薇でも咲き誇ったかのようだった。

「桃花ちゃんには、ずっとずっとそばにいてほしい」

「あ……それは専属秘書として、ですか?」

 すると、総悟が即答した。

「ううん、違うよ……上司だとか部下だとか関係なく、俺のそばにいてほしいんだ」

「総悟、さん……」

 嬉しい言葉をたくさん聞けて桃花はまるで夢の中にいるようだった。

(あれ……?)

 ふと、彼女は彼の前腕に掌位の長さの古い傷痕が見えて、そっと触れてしまう。

「総悟さん、痛そう」

「ああ、昔のだからたまに雨の時なんかに痛むぐらいだよ」

 何となく、いつついた傷なのだろうかと気になってしまった。
 以前から桃花のことを知っているような素ぶりを見せることのある総悟。
 傷を見た時に、ふと自分の両親の事故のことを想起させた。
 あの事故の時、病院に別の家族が近くにいなかっただろうか?

(彼の過去を詮索するのは良くない傾向だわ……)

 桃花は自分を律しようとしたのだが、だけど、何となく結ばれる前に確認はしてほしかった。

「総悟さん、私たちはどこかで会ったことがありますか……?」
 
 すると、総悟が苦しそうに見えて、桃花の胸はきゅうっと疼いた。

「……あなたが言いたくないのなら、無理に答えなくても大丈夫ですから」

 彼が少しだけ寂しそうに微笑んだ。

「今言わないのは卑怯かもしれないけど……話せる時が来たら、絶対に話すから」

 もしかすると総悟と自分はどこかで出会っていて、
 さすがにそれは自意識過剰すぎる想像かもしれないけれど……
 だけど今は、彼が自分をすごく大事にしようとしてくれているのが伝わってきているから……今はそれで良い。

「分かりました」 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

腹黒ピアニストは年上メイドを溺愛する

季邑 えり
恋愛
 須藤景子は新しく雇われた玉造財閥の御曹司、洋平坊ちゃまの専用メイドとなった。我儘ばかり言う坊ちゃまを甘やかす景子に、洋平の欲望はエスカレートする。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

処理中です...