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第1章 2年前、出会った頃の2人

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「桃花ちゃん!」

 二階堂副社長の声が聴こえてきたかと思うと、桃花にかかっていた荷重がふっと軽くなった。

(あ……)

 反動で桃花はその場にぺたんと跪いた。

「桃花ちゃん、大丈夫?」

「はい」

「それなら良かった」

 二階堂副社長が真っ先に桃花の心配をした後、エドワルド社長を支えながら床にしゃがみこむ。

「Mr.Edward,What’s wrong? Can you hear me? Do you feel dizzy?」

「I couldn’t sleep last night and I have lassitude.……」

 二階堂副社長が流暢な英語で、体調不良のエドワルド社長の対応をはじめた。

「I’ll call another staff member. ……桃花ちゃん、寝不足で疲れてるって社長さんは言ってる。良かったら近くの誰かを呼んでくれる? うちの産業医に診せるから」

「はい、分かりました」

 そうして、桃花は逸る鼓動を抑えながら、近くの職員たちに声をかけた。
 医務室から担架を運んでくると、力仕事が得意な男性たちが主体になって担いで、エドワルド社長は医務室へと連れて行かれる。
 勿論、二階堂副社長と桃花も着いていった。
 結果的に、エドワルド社長が話していた通り、寝不足による疲労が原因とのことだろうとのことだった。ただし、検査をしっかりおこなったわけではない。そのため、精査した方が良いのではないかと産業医から説明があったものの、海外では検査よりも問診が主体となっておこなわれており、「産業医の診断を信じる」とエドワルド社長は返答していた。
 結局、医務室での対談となり、遅れて通訳である女性職員が到着する運びとなった。
 皆で丸椅子に座って交渉を進めていく。

(とにかくよかった、エドワルド社長に問題がなくて……)

 桃花は、必死だったので知らぬ間に汗をかいていたことに気付いた。掌の汗をポケットに忍ばせていたレースの白いハンカチで拭う。
 二階堂副社長とエドワルド社長の話し合いも終盤を迎えていた。

(なんとか聞きとれるところは分かるけれど、半分以上は分からなかった)

 桃花は、英語の勉強をもっとしておけば良かったと内心後悔してしまう。

(それにしたって、二階堂副社長がしっかり仕事をしてくれている)

 数日一緒に過ごして分かったことだが、就業態度がとてつもなく良いとは言い難いものの、かなりの有能な人物だという事実をまざまざと見せつけられた気分だ。
 緊急時に動けない者も多い中、咄嗟に動ける類の青年のようで、かなり頼りになる存在だと言えよう。

(しかも今日の一件で、二階堂副社長のこと、かなり見直したかもしれない)

 桃花がそんなことを考えていたら、エドワルド社長が近くにいる通訳をちらりと見ながら大仰に肩をすくめると、こう告げた。

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