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第1章 2年前、出会った頃の2人
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……ふわり。
何者かに腰を抱き寄せられると、身体が後方へと浮遊する。
(あ……)
一段下の階段に足をつくと、脚の裏に床の感覚が戻ってきた。
何者かに抱き寄せられて助けられたようだ。
(助かった……)
まだ恐怖で足がガタガタ震えている。
間一髪、階段から落ちるのは避けられたのだけど……
「ああ、もう、君、何してるのさ……! 下手したら落ちるよ!」
二階堂副社長の怒鳴り声が桃花の耳元で響いた。
あまりの大きさに鼓膜が痛いぐらいだ。
「急に飛び出したと思ったら……クールな女性だって話だったっていうのに全然噂と違うじゃない。君の嫌う、就業時間内のとんでもない行動だよ、本当にもう……心配させないでよ……」
二階堂副社長が桃花のことを強く抱きしめてきた。
彼の抱きしめる力があまりにも強くて、本当に彼女のことを心配してくれているのが伝わってくる。
「申し訳ございません……」
午前中に抱きしめられた時よりも、彼の温もりがなんとなく心地良く感じていた。
桃花は震えが徐々に落ち着いてくると、二階堂副社長のそばをそっと離れ、先ほどの写真を差し出した。
「二階堂副社長、こちらを」
「え?」
写真に誰が映っているかは見ないように注意したが、どうしても視界に入ってしまう。
(女の人……)
そこに映る女性の姿を見て、ドキリとした。
モデルもかくやといわんばかりの美人な女性。
流麗な黒髪に、凛々しくも知的であり、女性らしさも兼ね備えた顔立ち。
朱色の着物に紫紺の袴姿で、成人式か何かの写真だろうか?
そばには誰かが一緒に映っている。
「きゃっ……!」
すると、パッと写真を二階堂副社長に奪われてしまった。
桃花は突然だったので驚いてしまう。
「良かった、ちゃんと戻ってきてくれた……」
二階堂副社長が愛おしそうに写真を抱きしめた。
(あ……)
そんな彼の顔を見ていると、桃花の胸がきゅうっと苦しくなった。
その時、彼がぱっと彼女に視線を戻す。
「ああ、桃花ちゃんは拾ってくれただけなのに、奪いとるような真似をしてごめんね」
バツが悪そうな表情を浮かべて、彼はそっと写真をポケットの中に仕舞った。
はぁっと深く溜息を吐く。
心底安堵した様子だった。
「もうほとんど残ってない上にデジタルデータが残せなくてさ。すごく大事にしてる写真なんだ。見つけてくれて本当にありがとう」
二階堂副社長が桃花に向かって寂しそうに微笑んできた。
(本当に大事な写真なのね……)
彼にとって大切なものを守ることが出来て本当に良かった。
桃花は内心安堵する。
だがしかし、時計を見て、一気に表情が強張っていく。
「あ、副社長!」
「どうしたのさ?」
「午後の会議が始まります!」
「え? ああ、もうそんな時間か、急ごう! あ、俺、先に行ってるね!」
そうして、二人してバタバタと副社長室へと戻る。
二階堂副社長の広い背を追い掛けながら、桃花は考えた。
(そういえば……)
午前中過ごしただけだったが、総悟が会議に臨む前だったり、何かの発言前だったりには、必ずジャケットのポケットを触っていたことを思いだす。
(ああ……)
桃花は直感的に悟る。
(……あの写真の女性は……)
……総悟にとって大切な女性なのだと。
何者かに腰を抱き寄せられると、身体が後方へと浮遊する。
(あ……)
一段下の階段に足をつくと、脚の裏に床の感覚が戻ってきた。
何者かに抱き寄せられて助けられたようだ。
(助かった……)
まだ恐怖で足がガタガタ震えている。
間一髪、階段から落ちるのは避けられたのだけど……
「ああ、もう、君、何してるのさ……! 下手したら落ちるよ!」
二階堂副社長の怒鳴り声が桃花の耳元で響いた。
あまりの大きさに鼓膜が痛いぐらいだ。
「急に飛び出したと思ったら……クールな女性だって話だったっていうのに全然噂と違うじゃない。君の嫌う、就業時間内のとんでもない行動だよ、本当にもう……心配させないでよ……」
二階堂副社長が桃花のことを強く抱きしめてきた。
彼の抱きしめる力があまりにも強くて、本当に彼女のことを心配してくれているのが伝わってくる。
「申し訳ございません……」
午前中に抱きしめられた時よりも、彼の温もりがなんとなく心地良く感じていた。
桃花は震えが徐々に落ち着いてくると、二階堂副社長のそばをそっと離れ、先ほどの写真を差し出した。
「二階堂副社長、こちらを」
「え?」
写真に誰が映っているかは見ないように注意したが、どうしても視界に入ってしまう。
(女の人……)
そこに映る女性の姿を見て、ドキリとした。
モデルもかくやといわんばかりの美人な女性。
流麗な黒髪に、凛々しくも知的であり、女性らしさも兼ね備えた顔立ち。
朱色の着物に紫紺の袴姿で、成人式か何かの写真だろうか?
そばには誰かが一緒に映っている。
「きゃっ……!」
すると、パッと写真を二階堂副社長に奪われてしまった。
桃花は突然だったので驚いてしまう。
「良かった、ちゃんと戻ってきてくれた……」
二階堂副社長が愛おしそうに写真を抱きしめた。
(あ……)
そんな彼の顔を見ていると、桃花の胸がきゅうっと苦しくなった。
その時、彼がぱっと彼女に視線を戻す。
「ああ、桃花ちゃんは拾ってくれただけなのに、奪いとるような真似をしてごめんね」
バツが悪そうな表情を浮かべて、彼はそっと写真をポケットの中に仕舞った。
はぁっと深く溜息を吐く。
心底安堵した様子だった。
「もうほとんど残ってない上にデジタルデータが残せなくてさ。すごく大事にしてる写真なんだ。見つけてくれて本当にありがとう」
二階堂副社長が桃花に向かって寂しそうに微笑んできた。
(本当に大事な写真なのね……)
彼にとって大切なものを守ることが出来て本当に良かった。
桃花は内心安堵する。
だがしかし、時計を見て、一気に表情が強張っていく。
「あ、副社長!」
「どうしたのさ?」
「午後の会議が始まります!」
「え? ああ、もうそんな時間か、急ごう! あ、俺、先に行ってるね!」
そうして、二人してバタバタと副社長室へと戻る。
二階堂副社長の広い背を追い掛けながら、桃花は考えた。
(そういえば……)
午前中過ごしただけだったが、総悟が会議に臨む前だったり、何かの発言前だったりには、必ずジャケットのポケットを触っていたことを思いだす。
(ああ……)
桃花は直感的に悟る。
(……あの写真の女性は……)
……総悟にとって大切な女性なのだと。
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