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後日談

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 そんなことを考えている間に、アーサー兄さまは白シャツの釦に手をかけて全て外した後、おもむろに脱ぎ捨てた。厚い胸板に逞しい二の腕……鍛えぬいた逞しい身体が露わになる。

(何回見ても落ち着かない……!)

 見ないようにと両手で自分の顔を隠したものの、チラチラと覗いてしまった。
 さすがに下半身には目をやらないが……
 すると――

「リーリアは脱がないのか?」

「え?」

「俺ばっかり脱いでるぞ……」

「え……あ……ぅ……」

 まだ湯に入る前だというのに茹だってしまった。
 お風呂に一緒に入ると決めたのは自分だ。

「わ、分かりました……」

 そうして、まずは黒いローブのフードに手をかけると、灰銀色の緩やかな髪が零れてきた。
 次に首元のリボンに手をかけて肩先から落とすと、床にドシャリと落ちる。
 薄手のワンピースだけの格好となった。
 ドキドキドキドキ。
 いよいよここからが本番だ。

(まだ服を着ているのに、アーサー兄さまの視線が気になって、脱ぐのにすごく緊張してしまう……)

 背中側を交差した紐で縛るタイプのワンピースなのだが、緊張しすぎてうまく後ろに手を回せなかった。

「脱げないのか?」

「ええっと……そうなんです……背中にある紐を解いてほしいのですが……」

「ああ、だったら手伝おう、俺に背中を向けてくれ……」

 くるりと背中を向ける。

(なんだか小さい頃みたいね……)

『リーリア、後ろのリボン、とれません』

『ああ、せっかく綺麗な髪なのに絡まってる。ほら、俺に任せてみろ』

 在りし日のことを思い出してクスリと笑ってしまう。

「どうした、リーリア?」

「いいえ、相変わらず、アーサー兄さまは優しいなと思って」

「それなら良いが」

 アーサー兄さまの剣蛸の出来た指が首筋に伸びてくると、くすぐったくて仕方がない。

(でも子どもの時とは違うのは……)

 小さい頃から大好きだったけれど、大人になった彼。
 ちょうど後頭部付近に上半身裸のアーサー兄さまの胸板がくる。
 どうしようもなく意識してしまって、とにかくドキドキして落ち着かなかった。
 兄さまの長い指がしなやかに紐を解いていく。
 背後からシュルリシュルリと音が聞こえるのも、私を落ち着かなくさせていった。

「ああ、全部ほどけたぞ」

 そうして――
 両肩に手を置かれたかと思うと、ワンピースとシュミーズごと肩先から落とされ、残るドロワーズの腰紐も解かれると産まれたままの姿になった。

(背中しか見えてないけれど……)

 お互い裸のまま脱衣場に立っているのだと考えれば考えるほど、羞恥は増していく。

「リーリア……」

 背後のアーサー兄さまが私の髪を手に取る。
 そうして、彼が髪に唇を寄せているのが分かった。

「子どもの時からすると、長くなったな……だが、よりいっそう艶やかさを増している」

「そんな……」

 そうして、露わになった肩先にアーサー兄さまがちゅっと口づけてきた。

「あ……」

「昔からそうだが……肌が白くて……いつ見ても綺麗だ……」

「綺麗だなんて、そんな……」

 「俺の可愛いリーリア」といつも呼んでくれるが、「綺麗」とは言われ慣れてなくて、なんだか胸がムズムズしてしまう。

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