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しおりを挟む巨大な顔が鎌首をもたげ、全身は大きく庭を覆うように蜷局を巻いている。
屋敷の外でも目撃されているのだろう。遠くから人々の阿鼻叫喚が聞こえてきた。
人々が恐怖する存在。
けれども、竜の慈しむような視線を受けて気付いてしまう。
(この竜の正体は……)
ドクンドクンドクン。
自分と同じ黄金の瞳。
間違いない。
間違えるはずがない。
「朝霧……!」
すると、龍が眩い光に包みこまれたかと思うと、すうっと人の形に変わっていく。
やはりというべきか――目の前に現れたのは朝霧だった。
「はあ、幼龍やのうて、成龍の姿は力を使うから疲れるわ」
やれやれといった調子で気怠げにあくびをしていた。
(裸……!)
竜の姿から人間の姿に戻ったからだろうか。
先ほど自分が脱ぎ捨てた小袖を慌てて朝霧に被せた。
見目が元々麗しいので女性の着物もよく似合っている。
「朝霧、どうして……?」
「派手に迎えに来てやるって約束してたやろ? 女子の格好も似あうやん、俺」
朝霧が喜々としているのを見て、なんだかホッとしてしまった。
「あやかしだったの……?」
「う~ん、人は人なんやけどね。まあ、あやかしというか……うん、血筋的に竜になれるんや」
「もしかして大きさは違うけれど……」
「せや、最初に夜這いにいった時に拾ってくれた白いあやかしが俺や」
「それならそうと最初から教えておいてください」
「せやけど、幼竜の俺、なんか恰好悪いから見せたくなかったんや」
理由がよく分からなかったけれど、小さい頃から視えていたので、そういう人もいるんだろうと薄っすらと理解することにした。
「せや、先にあんたに謝りたい。正月の行事が退屈やさかい、替え玉使うてたんがバレてもうて、なかなか抜け出せずじまいやったんや。予定より迎えにくるのが遅うなってしまった。堪忍な」
「正月の行事? 替え玉?」
何の話だろうか?
「ああ、俺は――」
彼が口を開いて何かを言いかけた時、騒ぎを聞きつけた父大納言が駆けつけてくる。
「どうしたんだ、これは!?」
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