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初めて出会った同じ特徴の人物に心がさざ波を立てた。
『桜子、必ず迎えに――』
なぜだか懐かしい気持ちになるのはなぜだろうか。
「なんや寒さを凌げたらええなと思ってたんやけど……良かったら俺のことは追い出さんといて、ここに置いてはくれへんやろうか?」
思いがけない提案をされたが、首を横に振る。
「さすがに殿方と二人きりというのは……」
だが、扉の隙間から冷たい風が吹きすさぶ。
どうやら外は吹雪きはじめたようだ。
「安心してえな、出会い頭に手は出さへんよ。ああ、気になるんなら、この子も一緒にどないや?」
ふと、彼が懐から何かを取り出す。
「にゃお」
「猫……?」
だが、よく見れば尻尾がいくつかに分かれている。
一見すると愛らしい白猫だが、どうやらあやかしの類のようだ。
「ああ、やっぱり姫さんにもこれが見えるんやな」
「ええ……あなたも……?」
「同類の女子には大人になってからは初めて会うたわ」
「ええっと……」
「仲間のよしみで優しくしてや、桜子さん、ほな……おやすみ」
どうして自分の名前を知っているだろうか?
気にはなったが、尋ねる間もなく相手は大きな鼾をかいて眠り始めた。
「そのまま板の上で寝たら風邪ひきますよ」
慌てて近くにあった単衣を一枚掛ける。
(そういえば、あのあやかしはどうしたのかしら……?)
雪の中に埋もれたあやかしがどうなったのか気にはなったが、そのまま眠りに就くことにしたのだった。
この時、実は起きていた男に嬉しそうに観察されているとは露とも知らず。
まさか――この出会いが自分の運命を大きく変えることになるとは思わずに――
『桜子、必ず迎えに――』
なぜだか懐かしい気持ちになるのはなぜだろうか。
「なんや寒さを凌げたらええなと思ってたんやけど……良かったら俺のことは追い出さんといて、ここに置いてはくれへんやろうか?」
思いがけない提案をされたが、首を横に振る。
「さすがに殿方と二人きりというのは……」
だが、扉の隙間から冷たい風が吹きすさぶ。
どうやら外は吹雪きはじめたようだ。
「安心してえな、出会い頭に手は出さへんよ。ああ、気になるんなら、この子も一緒にどないや?」
ふと、彼が懐から何かを取り出す。
「にゃお」
「猫……?」
だが、よく見れば尻尾がいくつかに分かれている。
一見すると愛らしい白猫だが、どうやらあやかしの類のようだ。
「ああ、やっぱり姫さんにもこれが見えるんやな」
「ええ……あなたも……?」
「同類の女子には大人になってからは初めて会うたわ」
「ええっと……」
「仲間のよしみで優しくしてや、桜子さん、ほな……おやすみ」
どうして自分の名前を知っているだろうか?
気にはなったが、尋ねる間もなく相手は大きな鼾をかいて眠り始めた。
「そのまま板の上で寝たら風邪ひきますよ」
慌てて近くにあった単衣を一枚掛ける。
(そういえば、あのあやかしはどうしたのかしら……?)
雪の中に埋もれたあやかしがどうなったのか気にはなったが、そのまま眠りに就くことにしたのだった。
この時、実は起きていた男に嬉しそうに観察されているとは露とも知らず。
まさか――この出会いが自分の運命を大きく変えることになるとは思わずに――
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