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第6章 仕組まれた罠、互いの気持ち

第23話 雪山の中で罰と想い※※

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 もう少しで原因不明だった病気の原因も分かって、完治するところだったのに――。

 死んだ方がマシだと思ったのが災いしたのか、ティナは雪崩に巻き込まれ、その若い生涯を閉じた。

 ――はずだった。

(なんだろう……寒い、寒い場所にいたはずだったのに……なぜだか、とっても暖かい……)

 すごく優しい揺り篭に抱きしめられているような――。
 
 そんな穏やかな気持ちのまま、ティナは目を覚ました。
 パチパチと近くで炎が爆ぜる音が聴こえる。
 木の香りが鼻腔をついてきた。

「ここは一体……? 私は雪崩に巻きまれて死んだんじゃ……」

 その時――ティナはぎゅっと誰かに抱きしめられていることに気付いた。

(あ……)

 彼女の眼前には、眠る美少年の姿があった。
 さらさらとした白銀の髪が、彼女の頬を撫ぜる。
 揺らめく炎が相手の肌を照らす。
 少年は瞼を閉じ、すうすうと寝息を立てていた。

「シグリード様……どうして……?」

 ティナは視線をきょろきょろと動かす。
 天井には丸太が組んだ梁が見えた。
 相当な年季が入った建物のようだ。
 そばには暖炉があり、パチパチと薪がされている。
 壁の向こうから、少しだけ隙間風が入ってくるものの、ひんやりと冷たくて気持ち良いと感じる程度だ。

(ここは、山小屋か何か……?)

 状況を整理するに、雪崩に巻き込まれたティナをシグリードが救ってくれたのだろう。
 おそらく雪崩は回避できたものの、彼の魔力が枯渇してしまって、近くの山小屋に移動したといったところか……。

(温めようとしてくれたの……? それで疲れて眠ってしまった……?)

 ふと、ティナは驚愕の事実に気付く。
 
「あ……」

 ティナもシグリードも裸だ。
 彼女は全裸で、彼は上半身のみ裸の状態ではあるが――。

(あ……)

 彼に何度も身体に触れられたが――完全に脱衣したことは、これまでなかった。

(もうほとんど治りかけているとはいえ……完全に真っ白な肌に戻ったわけじゃない……シグリード様に見られた……?)

 羞恥で、かあっと彼女の頬が紅くなっていく。

 そうして、自身の肌の様子を見て、今度は真っ青になっていく。


「なんで……どうして……?」


 魔核を中心にした彼女の肌――。

 ティナは自身の肌の様子を見て絶望する。

「そんな……どうして、こんなことに……?」


 困惑した彼女は、少しだけ冷静になる。


「ひとまず洋服を着なきゃ……」

 どうやら、暖炉の前で服を乾かしてくれているらしい。
 そっと彼の身体から抜け出すと、まだちょっとだけ濡れたシュミーズと紺色の修道服に袖を通す。
 ヴェールを頭にかぶると、心が落ち着いてくる。

(これで安心ね……)

 ティナがほっと安堵した、その時――。


「おい、また逃げ出そうとしてるんじゃねえだろうな……」


 背後から声が聴こえ、ティナははっとして振り返る。

 そうして、振り返った時には、彼はすでにティナの眼前にいた。

「あ……」


「邪竜の俺から――本気で逃げられると思ってんのかよ」


「シグリード様……」


 美少年姿のシグリードは、ティナを冷ややかな目で見つめてきていた。
 
(……シグリード様……)

 彼からは静かな怒りが感じられる。

 いつもの冗談だったり、ちょっとイライラしている感じとは違った。

「その……」
 
 ティナは何か返事をしようとするが、怖くて喉がひりついて言葉が出ない。

 少しだけ低い声で、彼が続けた。



「どういう了見だよ……? 身体は大事にしろって、命を粗末にするような真似するなって……俺は散々言ったはずだが……」


 ティナは言葉を返すことが出来ない。


(自業自得ね。だって、裏切るような真似をしたのは私だもの……)


 そうして――シグリードは冷ややかな視線のまま告げてきた。

「せっかく命を助けてやったのに、俺から逃げようとする女には仕置きだな……」

「あ……」

 ――仕置き。

 今まで優しかった彼から険のある表情を向けられて、ティナの心は揺れる。

(そう、本当は邪竜――魔物や魔族たちを統べる彼が、人間である私を大事にしてくれたのが……おかしいぐらいで……)

 せっかくの彼との優しさや関係性を壊したのは――。

(全部全部、自分が悪い……)

 ティナがぎゅっと胸の前で両手を握る。
 震えながら返した。
 かろうじて少しだけ声が出る。

「仕置き……というのは……?」


 そうして、彼が醒めた表情のまま、口を開く。

 命じられたのは――。


「――脱げ……」


「え?」


「聴こえなかったのか? 脱げって言ったんだよ……」


 ――思いがけない命令だったのだ。


 言葉が出ない。


「ほら、俺の言うことを聞いて、服を自分で脱げ……」


「服を……?」


「ああ、そうだ」


 ティナの手が少しだけ震える。

 そうして、彼女は問いかけた。


「服を脱いだら……私のことを許してくださいますか……?」


 だが――彼は黙ったままだった。


「お前の態度次第だ……ほら、早くしろ」



(シグリード様にこれ以上嫌われたくない……)


「……分かりました」


 ティナはシグリードの言うがまま――そっと羽織っていたヴェールをはぎ取る。
 彼女のローズゴールドの濡れた髪が背へと流れ落ちた。
 そうして、紺色の修道服に手をかける。
 ボタン部分を外すのに、少々手が震えた。
 ゆっくりと服を剥ぐ。
 暖炉で温められた室内の中、彼女はシュミーズ姿になった。
 晒された肌が、暖炉の炎で艶めかしく照らされる。


「まだ下着姿じゃねえかよ……全部脱げ……」


「はい、わかりました……」 


 彼女の頬は上気し、桜色の唇が戦慄いた。
 好きな男性に脱衣している姿を見られているのだと思うと、自然と呼吸と鼓動が速くなっていく。
 下着に手を掛けた。
 あまりの恥ずかしさに卒倒しそうだ。

(やっぱりどうしても、まだ全部脱ぐのには抵抗がある……)

 ティナは静かに反論する。

「これ以上は……さすがに」

「どうしてだ?」

 有無を言わさぬ相手の態度に、ティナはまた怯みかけた。

「こんな外で、こんなことは出来ません」

「外じゃねえよ、ちゃんとした部屋だろう? 別に寒くも熱くもないはずだ。良いから脱げ」

「そんなに命令されたら……脱ぎたくありません」

「脱げって……」

「脱ぎま……せん……」

 今までのシグリードだったら――。


『ああ、もう仕方ねえな……言うこと聴いてやるから……』


 そう言って、ティナの嫌がることはしなかったのに――。

「もう良い……これ以上抵抗するなら、縛り付けてでも、お前の魔力を奪って脱がせるぞ――」

 彼の眼光は鋭さを増した。
 少年なのに有無を言わさぬ威厳が宿る。
 彼が魔王なのだと――改めてティナは感じた。

「――とにかく脱げ」

 そうして、ティナは即座に返答してしまった。

「……分かりました」

 彼女は、シュミーズの肩紐に両手を添えて、肩から落とす。
 ドレスとは違って、いとも簡単に地面に落ちていく。
 ちょうど乳房の付近に彼の視線がある。

(もうダメだわ……私は全部を台無しにしてしまった……)

 シグリードが何か魔術をかけているのだろうか。
 春の冷たい風は吹いておらず、少しだけ暖かいので、風邪の心配はなさそうだ。

「おい……」

 彼がまた一歩、彼女近付いてきた。

 すっと手が伸びてくる。

(打たれる……?)


 きゅっとティナが目を瞑った。

 痛めつけられて、そうして無理矢理魔力を奪われるのだろうか――?

 だとしてもしょうがなかった。

 だけど――。

 身体が痛くなったりだとか――そんなことはなかった。

 気づけば――。

 少年姿のシグリードに彼女は抱きしめられていた。

 そうして――。


 
「ティナ、すまなかった……苦しくないか?」


 耳元で囁いてくるシグリードの声音が、あまりにも優しいから――。


「……はい……大丈夫です」


「――本当に? 今度こそ、嘘ついたら承知しねえぞ……」


 ティナの紫水晶の瞳が潤む。


「嘘じゃないです。痛くはないんです……だけど、なんでこんなことになったのか……」

 ティナの両目から涙がぽろぽろと零れ落ちた。

 ――治療を途中で辞めたせいだろうか。

 反動で、彼女の身体の痣はぶり返していたのだ。
 年頃の女性にとっては辛いだろう、紫斑が上半身どころか腰の付近までを覆っていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……私が全部悪くて……」

「お前が悪いって誰か言ったのかよ?」

「あの……」

「少なくとも、俺はお前が悪いなんて思ってねえよ……全部を自分のせいにしようとするな……こうなった結果も、半分は俺のせいだ……」

 彼に抱きしめられると、ティナの瞳にじんわりと涙が浮かんだ。

「シグリード様……私は……あなたにこんな風にしてもらえるような女では……」

「何言ってるんだよ……最後まで責任とるって言っただろう」

 そう言うと、彼が魔核にちゅっと口づけた。
 そのまま、彼女の脱いだ服の上に二人の身体が雪崩れ込む。
 彼女の上に跨った彼が、痣の上へと口付けを落としはじめた。

「うっ……ひっく……せっかくシグリード様が綺麗にしてくれたのに……もう戻らなかったらどうしよう……」

 泣きはじめた彼女の髪を、彼が優しく撫でる。

「仮に戻らなかったとしたら、お前と俺との契約期間が伸びるだけだ……まあ、俺から逃げ出すぐらいだから、お前は嫌なのかもしれねえがな……」

「シグリード様……」

(やっぱり何があっても優しい……)

 そうして、彼が彼女の肌の上に口づけを落とし続ける。

 泣きじゃくる彼女に、蕩けるように甘い口づけを、彼は与え続けてくれた。

 全身に口づけられた頃だろうか――?

 彼女の顔を見て、彼が柔らかく微笑んできた。

「ほら、落ち着いて、自分の肌を見て見ろ、ティナ」

「え……?」

 見れば痣が薄くなっているではないか――。

「あ……良かった……」

 背伸びした彼が彼女にちゅっと口づけた。
 くちゅりと水音が鳴る。
 くちゅくちゅと口の中を弄られている間に、ティナの心臓はどんどんうるさくなっていく。

「シグリード様……」

「ティナ……」

 だんだんと同じぐらいの身長になり――美青年の姿になったシグリードが、ティナと視線を合わせてくる。
 しばらくの間、紫水晶の瞳と藍玉の瞳が絡み合った。

 その時――シグリードがにやりと口の端をあげた。

「……相変わらずいやらしい女だな」

「え?」

「自分でも見てみろ。俺の前で脱ぐのがそんなに良かったか? だいぶ魔核は興奮しちまってるみたいだ」

 ティナが胸元に視線を移す。
 魔核が真っ赤に色づいている。

「ち、違います! これはシグリード様の前で脱いだから、こうなったのではなくって……」

「じゃあ、お前は雪山の中で裸になるのに抵抗ないってことだな……ほら、ドアが若干あいてる」

 ――シグリードの魔術のせいか、部屋の中が暖かかったので気づかなかった。

 古い小屋でドアの立て付けが悪いのか、風で扉が時折ギイっと開く。

「気づいていなかったんです! それに外に近い場所で裸になるのに抵抗がないとか言っていません! それにさっきは、ここは別に外じゃないって、シグリード様が仰ったんじゃないですか! 誰だって裸になれば恥ずかしくなって当然で……!」

 彼女がわあっとなって返すと――。

 シグリードが微笑んだ。

「そうやって、お前は百面相して怒ってる時が一番可愛いよ、ティナ」

 柔和なアイスブルーの瞳に射抜かれ、ティナの心臓がトクンと高鳴った。

「また赤く染まったな」

「もう……からかわないでください!」

 ぷんぷん怒っていると、彼は心底優しい笑みを浮かべていた。

(なんだろう……シグリード様なりの元気づけ……?)

 先ほどまでの冷ややかな雰囲気はどこへやら、二人の間に穏やかな空気が流れはじめる。

「まあ、真偽は後にするとして……ティナ、このままお前を気持ち良くさせてやるよ……」

「えっ?」

 彼女の首筋を彼が甘噛みする。

「あっ……そんな……ここは……雪山の小屋なのでしょう? ドアがあいたまま……誰か人が来るかも……――」

「誰も来ねえよ、こんな雪山に……ほら、もう脱いじまったついでだ……」

 彼の大きくなった手が乳房を揉みしだきはじめた。

「ふあっ、あんっ、あ……そんな、人は……来ないかもしれないけれど……魔物なんかが……」

「そんなの俺の知ったこっちゃねえ……ほら、気持ちが良いだろう?」

「ふえっ……ふあっ……あんっ……あっ……そんなっ……」

 なんとか抵抗しようとして、ティナは自身の胸を隠す。
 だが、そんな彼女の手を片手で奪い取りながら、彼が口付け続けた。
 ぴちゃぴちゃと水音が鳴り、舌が激しく絡み合う。

「昨日は嫌がられたからな……俺は、お前が欲しくて欲しくてたまらない……」

「シグリード様……んっ……」

「今朝も良い声で啼くな……ほら、そんなに胸を隠そうとしなくて良い。見てみろ、ほとんど痣は消えたから……」

 彼女の身体の上に乗るシグリードの大きな手が、胸を隠していた細腕をぐいっと引き剥がした。
 ふるりと小ぶりの乳房が露わになった。

「あ……」

 確かに彼の言うように痣は消えてしまっている。
 だが、主がまじまじと見つめてくるので、彼女の白い肌は淡く色づいていく。

「可愛いじゃねえか、ちょっと俺に見られたぐらいで、そんなに先端を赤く尖らせて……」

「あ……これは勝手に……」

「勝手に俺に反応してるのか?」

「……っ……!」

「可愛いったら、ありゃしねえな……」

 そういうと、ぱくりと彼が片方の果実を含んだ。

「ひゃんっ……」

「うまひな……」

「きゃん、くすぐったいです……ひゃうっ……!」

「なんか、犬に舐められたぐらいの反応だな……。ちっ……仕方ねえ」

「え? ――きゃんっ……」

「ほら、お前がよがるぐらい、激しくなめ回してやるよ」

「ふ、ふえええっ……あっ、そんなことを言ったわけじゃっ……あっ……やめっ……ふあんっ、あっ、そんなにされたら……あっ、あ……」

 実を舌で転がされると、背筋を快感がさざ波のように駆け上がっていく。

「ああ、やっぱりお前は下の芽だけじゃなくって、こっちも敏感なのな……」

「そんな言い方しないで……ください……ひゃあっ……んっ……」

「ああ、本当は全部しゃぶりつくしてぇが……」

 カリカリと乳首を噛んだ後、またも地厚い舌が先端をなめ回した。

「ふあっ、あんっ、あ……」

 彼に塞がれた乳首は、相手の熱を感じてとがったままだ。

「お前は――下も上も何もかも――全部綺麗で仕方がねえな……」

「ふえっ……ふあっ……」

 彼の大きくなった手が、もう片方の彼女の胸を鷲掴みにしてる。
 ぐにぐにと変形させられ、嬌声があたりに響き渡った。

「ああ、本当に可愛い声で啼くな……じゃあ、隣な……」

 そういうと、彼は彼女のもう片方の乳房へと移行した。
 れろれろと舌の動きを直に感じて落ち着かない。
 その間、彼が背筋に手を伸ばしてきたかと思うと、背をなで始めた。

「ふあっ……あっ……」

 ふと――。

「なあ、ティナ、お前は俺のことどう思ってる……?」

「命の恩人です」

「それ以外に何かねえのか?」

「主従関係……ですよね、本来は……邪竜を鎮める神子だったわけですし」

「確かにそうだが……」

「あとは……仮初の旦那様……」

 ティナの言葉を黙ったまま聴いていたシグリードが、憮然とした表情を浮かべる。

「じゃあ、胸はいじり倒したから――今度は下な……」

「ふえっ……そんな、あ、ドアが風で開いちゃう……」

「気が変わったんだよ。もうお前の言うこと聞いてやらねえ……罰として、ほら、ここで脚を開け」

「ううっ……どうしても?」

「どうしてもだ」

 彼の言うがまま、彼女は両脚を開いた。
 少しだけ風が吹いて、むき出しの花弁をヒンヤリと撫でる。

「良い子だ……痣が全部消えるぐらい、お前を愛し抜いてやるから……」

 そうして両脚に彼の両手が添えられ、さらに大きく脚を開かされた。

「ふあっ……そんなに見ないでください……」

「そんな風に言われて、見なくなるやつはいねえよ」

 彼が彼女の脚の間に頭を突っ込んだ。
 そのまま蜜口を、彼の地厚い舌がこじ開けはじめる。

「ふあっ、あんっ……ああっ……舌でそんなにしちゃダメっ……」

「こんなに蜜を溢れさせてるやつに言われても、ダメって言っても説得力ねえな……」

 彼の舌が蠢けば蠢くほどに、どんどん愛蜜は溢れ出していく。

「ふあっ、あっ、あんっ、あっ……」

「魔核も肌もこっちの花びらも、何もかも綺麗に赤く染まって……こっちも硬く尖らせやがって……誘ってきやがるな」

「誘ってなんか……ひゃあっ……あっ、あっ……そこ、弄っちゃ……ひゃあっ……あっ、あっ……ああっ……――!」

 彼の舌に遊ばれ続けた彼女は――絶頂を迎えた。
 背をしならせる。両脚がびくつき、足先をぎゅっと閉じた。
 花弁の向こうにある蜜口はひくひくと彼を誘う。
 ティナに対して上目遣いになりながら、シグリードが返した。

「なあ、ティナ、もう俺から逃げないって誓ってくれるか?」

「はい……もう……逃げたりしませんから……」

「そうか、良かった」

 彼が心底安堵したように微笑んで、ティナの心臓がきゅうっと苦しくなった。

「シグリード様は――私のことを許す気になりましたか?」

「ああ? そういえば――そんなこと言ってたな……もう命を捨てようなんざ真似をしないんなら許してやるよ」

「はい、ありがとうございます……」

「ああ、今日も綺麗だった……良い魔力の補給になったよ……さて、帰るか……帰ったら――俺の気持ちを改めて伝えたことが――ん?」

 ティナは瞳を潤ませる。

「どうして、シグリード様は、私のことを追いかけてきてくださったんですか?」

「どうしても何も……好きでもねえ女のことを追いかけるわけねえだろうが……いい加減分かれよな」

「え……? それはどういう意味でしょう……」

 ティナは驚きの声をあげてしまった。

「言葉通りの意味に決まってるだろう?」

「だけど、シグリード様は、魂の欠片を守り続けるぐらいティナ姫のことが好きで……」

 そんな彼女に向かってシグリードは問いかける。

「――洞窟の中、見ちまったのか?」

「……はい……」

 シグリードは一度瞼を閉じると、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

「確かに俺はクリスティナのことを愛していたが――それ以上に、お前のことを――」

 そうして、彼が彼女の唇を再び塞いだ。

「お前だよ……ティナ……二千年間、俺の凍った心を溶かしてくれたのは……お前なんだ……お前だけなんだよ……」

「それは、いったいどういう意味ですか?」

「決まっているだろう?」

 そうして熱情のこもる眼差しで彼が告げた。

「俺はお前に惹かれている……卑怯だと思われても構わない……お前のこともティナ姫のことも……どちらも心に抱く俺のことを……」

「シグリード様……」

 美青年姿のシグリードと生まれたままの姿のティナは身体を絡め合う。

 そうして二人の――本当の初夜が始まろうとしているのだった。

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