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ハネムーン後の物語「隠し子騒動?」
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しおりを挟むそうして、着替え終わって菓子工房の外に出ると、ギルフォードが待ってくれていた。
高身長な上に俳優もかくやな美形の彼は目立ってしょうがなかった。
誰かが通るたびに、彼の方へと視線をちらちらと移す。
「ギル、お待たせ!」
「ああ、ルイーズ、早かったな」
彼に肩を抱き寄せられる。
「早く上がれたんだ、家でたっぷりのんびりしよう」
「ええ、ギル」
そうして、隣を歩く彼の熱を感じながら、思いを伝えた。
「ごめんなさい、この間の件、改めて謝りたいの……」
「もうあの時、謝罪してくれただろう? 何度も謝る必要はない」
「……だけど……」
すると、また強く肩を抱き寄せられた。
「そんなに申し訳ないっていうんなら、詫びとして、今晩も俺に付き合ってもらおうか?」
「……っ……!」
そうして、色香を孕んだ声音が鼓膜を震わせてくる。
「さすがに明日はお前も仕事だ、一晩中とは言わないが……今日はまだ陽が高い。夜までたっぷりお前を堪能させてくれよ」
外だというのにゾクゾクしてしまった。
そうして、顔を真っ赤にしながら返す。
「……分かったわ」
すると、ギルフォードが一瞬だけ面食らったようだった。
「自白剤を吸わなくても素直なお前が見れるとは思わなかった」
「悪かったわね、普段は素直じゃなくて……」
「さて、そうと決まれば、早く帰ろうか」
「え、ええ……」
ふっと肩から彼の手が離れてしまい、少しだけ寂しい気持ちになる。
「ギル、あの……」
その時、彼の大きな掌が私の手を掴んできた。
そうして、長い指が私の指と絡まり合う。
彼の熱を掌に感じて、幸せで心があたたかくなって、ほろほろと溶けてしまいそうだ。
見上げたギルフォードが蕩けるような笑みを浮かべる。
「俺はどんなお前でも受け止められる自信がある、愛している、ルイーズ」
「ありがとう、私もよ、ギル……」
そうして、屋敷に戻った私たちは、陽が高い内から夜になるまで、愛を確かめ合って過ごしたのでした。
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