【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者

おうぎまちこ(あきたこまち)

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ハネムーン前日譚

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 結婚式は無事に終了した。
 皆に祝福される中、配ったウェディングケーキは盛況だった。
 有名な実業家と令嬢の結婚ということもあって、新聞にも取りざたされた。

 そうして迎えた幸せな新婚生活――のはずだったが――。

 ハネムーンへと向かう前、ギルフォードと私は喧嘩になってしまっていた。
 原因は、最近ところかまわず彼がベタベタしてくること。
 百歩譲って、送迎の際の口づけは許す。だが、菓子作りの時にまでベタベタしてきて……火だって使うことがあるんだし、危ないのだ。 

「ギル! しばらく私に触ってこないでちょうだい!」

 夜、書斎の椅子に座って本を読んでいたギルフォードに向かって、私は叫んだ。
 珍しく眼鏡をかけていた彼が、こちらをちらりと見上げてくる。

「なんだ、ルイーズ? また何かあったのか?」

「いちいち説明しないと分からないの?」

 ギルフォードの、男性だけれども長い金の睫毛がふるりと揺れた。
 
「お前の機嫌が悪いのは分かったよ、ルイーズ。お前が納得するまで、そうしたら良い」

 毎日身体を求めてくるギルフォードは、もっと抵抗してくるかと思ったものの、わりとあっさり引き下がられ拍子抜けしてしまう。

「……それだけだから、じゃあ」

(結婚前は追いかけてきてくれたのに……)

 唇を尖らせながら、書斎を後にしたのだった。


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