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ハネムーン前日譚
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しおりを挟む結婚式は無事に終了した。
皆に祝福される中、配ったウェディングケーキは盛況だった。
有名な実業家と令嬢の結婚ということもあって、新聞にも取りざたされた。
そうして迎えた幸せな新婚生活――のはずだったが――。
ハネムーンへと向かう前、ギルフォードと私は喧嘩になってしまっていた。
原因は、最近ところかまわず彼がベタベタしてくること。
百歩譲って、送迎の際の口づけは許す。だが、菓子作りの時にまでベタベタしてきて……火だって使うことがあるんだし、危ないのだ。
「ギル! しばらく私に触ってこないでちょうだい!」
夜、書斎の椅子に座って本を読んでいたギルフォードに向かって、私は叫んだ。
珍しく眼鏡をかけていた彼が、こちらをちらりと見上げてくる。
「なんだ、ルイーズ? また何かあったのか?」
「いちいち説明しないと分からないの?」
ギルフォードの、男性だけれども長い金の睫毛がふるりと揺れた。
「お前の機嫌が悪いのは分かったよ、ルイーズ。お前が納得するまで、そうしたら良い」
毎日身体を求めてくるギルフォードは、もっと抵抗してくるかと思ったものの、わりとあっさり引き下がられ拍子抜けしてしまう。
「……それだけだから、じゃあ」
(結婚前は追いかけてきてくれたのに……)
唇を尖らせながら、書斎を後にしたのだった。
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