【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者

本編

30

　その後、無事に結婚式を迎えた。
　最近、わが国ではウェディングケーキが流行だ。
　結婚式後のお披露目では、私、お手製のケーキを出すことになっている。
　純白のウェディングドレスに身を包んだ私が鏡に映った。
　これ以上なく幸せそうな自分の姿を見て嬉しくなる。
　控室の中、そっと誰かが入ってきた。

「ルイーズ、綺麗だ」

　現れたのはギルフォードだった。
　金の髪と蒼い瞳が煌めいていて、長身痩躯の彼に、白いタキシードが映える。

「ギルったら、結婚式前なのに会いに来るなんて……もう、相変わらずなんだから」

　立ち上がった私の前に、彼が近づいてきた。

「ルイーズ・フォード、お前みたいな菓子作りには励む変わった令嬢じゃあ、誰ももらってはくれないだろうな」

　――これは、学生時代の――。

「仕方がないから、この俺がお前を貰ってやってもいい。むしろ、お前の家に養子に入って、ギルフォード・フォードになっても構わない」

「ギル……？」

　しばらく彼のおふざけに付き合うことに――せずに、真面目に返した。

「もう、弟が生まれてるから、その必要はないわ」

　ふっとギルフォードが微笑んだ。

「……まあ、とにかく俺専属の菓子職人になれば良いさ」

　そうして、彼が黒い箱を差し出してきた。

「ギル……」

　学生時代に跳ね返した……。
　今度は突っぱねず、彼が箱を開くのを待つ。
　中から出てきたのは、サファイアの指輪。
　もうすでに婚約指輪は薬指に一つある。
　エメラルドの婚約指輪に、サファイアの婚約指輪を重ねづけた――。
　
　深呼吸をして、今度は嘘ではなく本当の気持ちを伝える。

「……仕方ないわね、ギル。毎日でも作ってあげるわ」

　ギルフォードが少年の頃と変わらない幸せそうな笑みを浮かべた。

「ありがとう。お前だけを未来永劫愛している。これからもずっと一緒だ、ルイーズ」

　大人になった私たちは、結婚式前に互いの身体を抱きしめ合った。

　そっと素直に優しく口づけ合う。
　
　私の薬指で、互いの瞳の色――蒼と碧が寄り添いあって煌めき合っていたのだった。



（本編終）

※ギルフォードがルイーズに恋した理由(過去編)等に続きます