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第3章 別れと旅立ち――白豚と龍帝――

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「さあ、仕上げだ、我が花嫁――俺の全てを受け入れておくれ――」

「ああっ……!」

 肌が激しくぶつかり合った。蘭花の身体が跳ね上がる。
 熱い奔流がどくどく注がれ、彼女の内側に渦巻いた。
 ぎゅっと抱きしめられると、彼も汗をかいていたことに気づく。 
 汗ばんだ肌同士が張り付き合う。
 いつになく優しい手つきで、額に貼りついた髪を払われ、ちゅっと口づけられた。

「――痛くはないか? 薬も落ち着いてきたかな?」

「え、ええ」

 確かに身体が火照ってはいるが、別の熱さだった。
 それに、無理矢理純潔を奪われたような状態なのに――結ばれたことに嫌な気持ちがしない――それどころか、言いようのない幸せに包まれる感覚があるのはなぜだろうか。

「これで――俺がちゃんと皇帝と認められて、妖たちに命じさえすれば、君が妖に狙われることはなくなるだろう」

 真剣な眼差しに心が震えた。
 どういう理屈かは知らないが、彼の言うことは正しいのかもしれない。

(妖――)

 なぜならば、我々の近くに現れた妖が、皆一様に敬礼してこちらを向いていたのだから。
 

「さて、今までは君を狙ってきていた彼らが、今日からは君を守る僕になる。され、これで俺も心置きなく華都に帰れるな――」

「え――?」

 天狼が思いがけない言葉を口した。

「帰る……?」

「ああ、俺の目的は達成された――本当は、君の心をこちらに向けてから、事に及びたかったのだがな――」

 彼にしては珍しく、少しだけ寂しそうに笑ってくる。

(私の心をこちらに向けて――?)

 蘭花の胸が高鳴る。

 帝都に帰るという言葉と、心をこちらに向けたいという言葉。

 両方に彼女の心は揺れ動いた。

 のらりくらりと本題をかわしてくる天狼だが、彼の本当の胸の内を知りたい。

「天狼、あの――」

 問いかけようとしたその時――。

 ぐちゅりと結合部が鳴った。

(ん――?)


「帝都を離れる前に――さあ、もう一度、君を堪能させてもらおうか、我が花嫁」


 そんなことを言いながら、腰を揺すりはじめる。

「え? ひあっ、あっ……」


 ふと、蘭花が脇を見る。

 ぞろぞろ集まってきていた妖たちが、一斉に天狼と蘭花の二人に視線を注いできていた。

「あっ、ちょっ、皆見て……」

「前も言ったはずだ。外野がいた方が燃えるだろう?」

 彼が自分を恨んでいるとか、もしかしたら好意を抱いているとか、昔からの知り合いかもしれないだとか――そんな話は忘れ、蘭花はわなわなと震える。


「ふざけないで――――――――――――ー!! 皆が見てる前で、調子に乗って動くんじゃないわよ―――――!!!!!」


 その夜、城下町まで、蘭花の叫びが木霊したのだった。


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