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第1章 出会い――彭候――

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 ぼろ小屋のような家の前で拾った、見目麗しき青年――天狼てんろうがそう言うと、裸である蘭花らんふぁの身体の上から離れる。
 彼は懐から何かを取り出すと、屋敷の端にある木柱に向かって投げつけた。

匕首ひしゅ(ダガー)……!? この男、暗器使いなの?)

 風を切り裂くようにして、刃は柱に突き刺さる。

「ギギっ――」

 何かのうめき声が聞こえる。


 柱の割れ目が次第に変化を遂げ、現れたのは――。


「なぜ、わかった……?」


 ――青白い顔をした男の顔に犬の身体をした生き物だった。

 見るだけで肌が粟立った。
 蘭花は小さな悲鳴を上げる。


「や……何――!?」

 
 天狼が答える。


「あれは彭候ほうこうといって、木に憑りつく妖だよ――ずっとこの家に棲みついて、君の精を奪っていたんだ」


 先ほどまでのふざけた態度とは違って、真面目に話す天狼の顔は凛々しくて、蘭花の心臓はドキリと跳ねた。

(な、何……? 別にカッコイイだなんて思ってなんか――!)

 気を取り直した蘭花は、身体の上に跨がる美青年に声をかける。

「私の精を奪っていたの……?」

「まあ、詰まるところ、君が身体が火照ってどうしようもなく困っている姿を見て楽しんでいたといったところかな?」

「な!!! なななな……!」

「どうしたんだい? 自分で自分を慰めたことはなかったんだろう?」

「そんなわけないじゃない!! そうじゃなくって! 妖に毎日見られたんだったら怖いって言ってるのよ!!」

「我が花嫁のその反応、怖がっているとは思えなかっ――ぐえっ……!」

「――きゃっ!!」

 二人で言い合いをしていると、目にも止まらぬ速さで、彭候の身体が天狼の頭に直撃した。
 直後、天狼は床に倒れ伏す。

「ちょっと貴方、こんな時に倒れないで……! ……っ……!」

 気づけば、彭候が身体の上に乗っているではないか。
 蘭花は一気に危機感を覚える。
 彭候は下卑た笑いを浮かべていた。
 ふさふさとした犬の毛が蘭花の腹部をくすぐる。
 青白い男の顔が、彼女の胸へと迫った。そうして、二つの膨らみの間をぬめりとした舌が、べろりと舐める。

「やぁっ……!」

 先ほど、天狼に秘部を嘗め回された際には、ぞくぞくとした快感が彼女を支配した。
 だが、妖の舌に肌をなめられた際には、ぞわりと全身に鳥肌が立つほどの不快感が、蘭花を襲ったのだった。
 
「お嬢さん、とても魅力的なんだが、いつも白猫が居て、なかなか手が出せなんだ。姿を明かされてしまったし、せっかくだからこの男が寝ている間に、犯してあげよう――」


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