4 / 31
第1章 出会い――彭候――
4※
しおりを挟む蘭花の手は勝手に動いてしまっていた。
しゅるりしゅるりと紐を解く音が小屋の中に響く。
パサリと音を立て、藍色の裳が落ちる。
「天狼とかいう男、あなた、私に何の妖術を使ったの……くっ……」
「どうだろうか……?」
相手は悠然と笑みを浮かべたままだ。
そのまま、彼女の指は自身の桃色の上衣に伸びる。
肩先からするりと落ちていき、地面に乱れ落ちた。
そのまま白地の衵服(下着)の袂に手をかけてしまう。
震える手が、そちらも地面に落としてしまった。
「あ……」
「そんなに怯える必要はない」
気づけば、生まれたままの姿にされていた蘭花。
絹のような滑らかな肌の上を、天狼の綺麗な長い指がなぞりはじめる。
「あっ……んっ……」
なだらかな丘陵の上から、赤く色づいた先端、そうして細く締まった腰へと、相手の長い指が移動する。
ピクリと反応した彼女の下腹部がきゅうっと締まった。
老若男女の心をつかむような蕩けるような微笑をたたえながら、彼は彼女に命じる。
「さて、我が麗しき花嫁・蘭花よ――私の腕の中においで」
(どうして? この人に命じられると、なぜだか拒むことが出来ない)
碧の瞳に吸い込まれそうになりながら、長身痩躯の身体へと蘭花はしなだれかかった。
彼女の黒髪を撫でながら、彼は甘い声音で囁く。
「男に抱かれるのは初めてだろう? 優しく抱いてあげよう」
(やっぱりこのままじゃ、この男の手籠めにされてしまうわ)
「いや……出会ったばかりの男性に身を委ねる性癖を、私は持ち合わせていないわ」
きっと相手をにらみつけた。
強気な口調で伝えたものの、彼女の身体は言うことを聞いてはくれず、下腹部の疼きは強まるばかりだ。
天狼は、蘭花の話を継ぐ。
「そうか……だが、君は我が花嫁だ。どうしても、妖の類を魅了してしまう。早く私と契り、私の加護を受ける。それこそが、君のその悩みを解決する最速最善の道といえる」
唐突な話の展開に、蘭花の頭はついていくことが出来ない。
「妖……? あなたの加護……? いったいどういう意味なんだか――きゃっ!」
裸の彼女を、天狼が軽々と横抱きにした。
彼が土間から床へと移動すると、ぎしぎしと音を立てた。
ぼろ小屋の梁と天井の間には隙間があり、少しだけ星空が覗く。
彼を出迎えるために準備していた清潔な寝床へと、彼女の身体は横たえられる。
「言葉通りの意味だよ――さて、麗しき花にいつもどのように触れているのか、私に教えてごらん?」
「どういう意味?」
美しい眉を潜めながら、蘭花は天狼に問いかける。
「言葉通りの意味だが……そうか、君は疼いたとしても、何もせずにじっと黙っていたのか――私に触れられるのを、よほど待っていたのだと言える」
「だから、どういうことなんだか、さっぱり意味が分からない――きゃっ――」
彼の指が、彼女の割れ目に伸びる。
「まさか、花びらって――?」
1
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説
大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。
水鏡あかり
恋愛
姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。
真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。
しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。
主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。
〈短編版〉騎士団長との淫らな秘め事~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~
二階堂まや
恋愛
王国の第三王女ルイーセは、女きょうだいばかりの環境で育ったせいで男が苦手であった。そんな彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、逞しく威風堂々とした風貌の彼ともどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。
そんなある日、ルイーセは森に散歩に行き、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。そしてそれは、彼女にとって性の目覚めのきっかけとなってしまったのだった。
+性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が全面協力して最終的にらぶえっちするというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。
【R18】はにかみ赤ずきんは意地悪狼にトロトロにとかされる
梗子
恋愛
森の入り口の村に住むクレアは、子どもたちに読み書きを教えて暮らしているごく普通の村娘
そんなクレアは誰にも言えない秘密を抱えていた
それは狼男の恋人のロイドがいるということー
ある日、村の若者との縁談を勧められるが、そのことがロイドに知られてしまう。
嫉妬に狂ったロイドはクレアを押し倒して…
※★にR18シーンがあります
※若干無理矢理描写があります
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
腹黒伯爵の甘く淫らな策謀
茂栖 もす
恋愛
私、アスティア・オースティンは夢を見た。
幼い頃過ごした男の子───レイディックと過ごした在りし日の甘い出来事を。
けれど夢から覚めた私の眼前には、見知らぬ男性が居て───そのまま私は、純潔を奪われてしまった。
それからすぐ、私はレイディックと再会する。
美しい青年に成長したレイディックは、もう病弱だった薄幸の少年ではなかった。
『アスティア、大丈夫、僕が全部上書きしてあげる』
そう言って強姦された私に、レイディックは手を伸ばす。甘く優しいその声は、まるで媚薬のようで、私は抗うことができず…………。
※R−18部分には、♪が付きます。
※他サイトにも重複投稿しています。
【R18】軍人彼氏の秘密〜可愛い大型犬だと思っていた恋人は、獰猛な獣でした〜
レイラ
恋愛
王城で事務員として働くユフェは、軍部の精鋭、フレッドに大変懐かれている。今日も今日とて寝癖を直してやったり、ほつれた制服を修繕してやったり。こんなにも尻尾を振って追いかけてくるなんて、絶対私の事好きだよね?絆されるようにして付き合って知る、彼の本性とは…
◆ムーンライトノベルズにも投稿しています。
黒豹の騎士団長様に美味しく食べられました
Adria
恋愛
子供の時に傷を負った獣人であるリグニスを助けてから、彼は事あるごとにクリスティアーナに会いにきた。だが、人の姿の時は会ってくれない。
そのことに不満を感じ、ついにクリスティアーナは別れを切り出した。すると、豹のままの彼に押し倒されて――
イラスト:日室千種様(@ChiguHimu)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる