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第1章 出会い――彭候――

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 蘭花の手は勝手に動いてしまっていた。
 しゅるりしゅるりと紐を解く音が小屋の中に響く。
 パサリと音を立て、藍色のスカートが落ちる。

「天狼とかいう男、あなた、私に何の妖術を使ったの……くっ……」

「どうだろうか……?」

 相手は悠然と笑みを浮かべたままだ。

 そのまま、彼女の指は自身の桃色の上衣に伸びる。
 肩先からするりと落ちていき、地面に乱れ落ちた。
 そのまま白地の衵服はくふく(下着)の袂に手をかけてしまう。
 震える手が、そちらも地面に落としてしまった。 

「あ……」

「そんなに怯える必要はない」 

 気づけば、生まれたままの姿にされていた蘭花。
 絹のような滑らかな肌の上を、天狼の綺麗な長い指がなぞりはじめる。

「あっ……んっ……」

 なだらかな丘陵の上から、赤く色づいた先端、そうして細く締まった腰へと、相手の長い指が移動する。
 ピクリと反応した彼女の下腹部がきゅうっと締まった。

 老若男女の心をつかむような蕩けるような微笑をたたえながら、彼は彼女に命じる。


「さて、我が麗しき花嫁・蘭花よ――私の腕の中においで」


(どうして? この人に命じられると、なぜだか拒むことが出来ない)

 碧の瞳に吸い込まれそうになりながら、長身痩躯の身体へと蘭花はしなだれかかった。
 彼女の黒髪を撫でながら、彼は甘い声音で囁く。


「男に抱かれるのは初めてだろう? 優しく抱いてあげよう」


(やっぱりこのままじゃ、この男の手籠めにされてしまうわ)


「いや……出会ったばかりの男性に身を委ねる性癖を、私は持ち合わせていないわ」


 きっと相手をにらみつけた。
 強気な口調で伝えたものの、彼女の身体は言うことを聞いてはくれず、下腹部の疼きは強まるばかりだ。
 天狼は、蘭花の話を継ぐ。


「そうか……だが、君は我が花嫁だ。どうしても、あやかしの類を魅了してしまう。早く私と契り、私の加護を受ける。それこそが、君のその悩みを解決する最速最善の道といえる」


 唐突な話の展開に、蘭花の頭はついていくことが出来ない。


「妖……? あなたの加護……? いったいどういう意味なんだか――きゃっ!」


 裸の彼女を、天狼が軽々と横抱きにした。
 彼が土間から床へと移動すると、ぎしぎしと音を立てた。
 ぼろ小屋の梁と天井の間には隙間があり、少しだけ星空が覗く。
 
 彼を出迎えるために準備していた清潔な寝床へと、彼女の身体は横たえられる。
 

「言葉通りの意味だよ――さて、麗しき花にいつもどのように触れているのか、私に教えてごらん?」


「どういう意味?」


 美しい眉を潜めながら、蘭花は天狼に問いかける。


「言葉通りの意味だが……そうか、君は疼いたとしても、何もせずにじっと黙っていたのか――私に触れられるのを、よほど待っていたのだと言える」


「だから、どういうことなんだか、さっぱり意味が分からない――きゃっ――」


 彼の指が、彼女の割れ目に伸びる。


「まさか、花びらって――?」

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