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しおりを挟む「そんなに頭ガチガチだと、疲れないかい……?」
「放っておいてください!」
ちなみに私は彼を補佐する副官の立場ではあるのだが――
(いつもちょっかいばっかりかけてきて、仕事の邪魔をしてくるんだから……!)
「ああ、今日も機嫌が悪いねえ。膨れっ面も可愛いけどね。あ、そうだ、せっかくだから俺と飲みに行かないかい?」
そんなブライアン騎士団長からプイッと視線を逸らすと、腕組みをしてから返す。
「おあいにく様、今日はデートに呼ばれておりますので!」
普段ならば何か言い返してくる。
だから、今日も何か言い返してくるものだと思ったのだが――
「ああ、そうなんだね――最近付き合いだした、あの文官、伯爵令息のジェイクっていったかな?」
私は相手をちらりと見上げた。
「そうです、ジェイクのことを、ご存じなんですか?」
「ああ、君のことなら何だって知っておきたいからね」
ブライアン騎士団長はふっと頬を綻ばせてきた。えくぼができると、なんだか無邪気な少年のようだ。
軽い調子で言われているのは分かっているが、なんだか気恥ずかしくなってしまう。
そんな自分を気づかれたくなくて、ふいっと視線を逸らした。
「誰にでもそういうことを言うんでしょう?」
「いいや、前々から言っているが君にだけだよ」
「……冗談ばかり言う人は苦手です! では、もう今日の業務は全て片付きましたので、ここで失礼させていただきます!」
私は勢いよく椅子から立ち上がった。
「おやおや、嫌われたものだね、俺も……個人的にはあのジェイクっていう奴はさ、あんまりオススメしないかな。こう、あんまり一途じゃなさそうっていうか」
「女性を侍らせてばかりの貴方がそれを言うんですか……?」
「んん、同類だからこそさ。俺の直感かな?」
なおも軽口を叩く上司を背に、私は扉へと向かう。
(没落しかけの伯爵家を再興するためには、同等以上の男性と結婚しなければならない)
だからこそ、多少難ありだと言われているジェイクであろうとも、結婚できそうな相手と急いで結婚したいのだ。
(それに――そもそもブライアン団長のことは嫌いなんかじゃない)
文官とはいえ女性だからと入団を断られてばかりで、行くあてのなかった私を拾ってくれた騎士団長には恩義を感じているのだ。
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