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後日談5
しおりを挟む数日後。
今日はちゃんと執務を真面目に終えた。
勤務終了後、帰り支度をする。
(ヒルデ様と床を共にすると、必ず私が先に寝てしまう)
騎士として鍛えた私よりも、王子である彼の方が体力があるなんて――。
(ちょっとだけ悔しい)
何かに気づいた王子が、いつの間にか私の前に立っていた。
机の上には大きな箱。
(ヒルデ様、気配も消せるし……)
護衛なんて要らないぐらい、彼が強いのだ。
だけれど、彼は私を護衛騎士として、そばに居させ続けてくる。
「エレナ、どうしたの?」
浮かない顔をしてしまっていたのかもしれない。
「いいえ、その、ヒルデ様はいつも余裕がおありだなって……」
「余裕があるように見える?」
「え? はい、もちろ――」
すると、いつの間にか抱きしめられていて、ちゅっと額に口づけられた。
「――余裕あるように見せてるんだよ。お前の気を惹くために、影で鍛えてたり。あと、お前に好かれたくて、色々器用に見せたり……」
「そう……なんですか?」
そう言われると、それ以上は何も言えない。
いつの間にか、左手を握りしめられていた。
極上の笑みを讃えた彼が微笑んでくる。
「なあ、俺の大事なエレナ……」
いつの間にか、私の左手の薬指に柘榴石が輝く婚約指輪が嵌められていた。
「お前に好かれるためなら、俺は何にだってなるし、なんだってやるよ。だから――」
いつもの口調に、彼が戻る。
「これからも、アタシとずっと一緒にいてね。愛してる」
そうして、また柔らかなキスを落とされる。
机の上の大きな箱の中には――私の体にジャストサイズのドレスと騎士服が、ひょっこり顔を覗かせていたのだった。
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