【R18】護衛対象はオネエな王子様――溺愛王子は夜、獣に豹変する――

後日談1

　第二王子ヒルデ様と結婚が決まった。
　婚約したけれども、私が彼の護衛騎士であることに変わりはない。
　とはいえ、ヒルデ様は強い。ちゃんと自分が護衛の役目を果たせているのか心配だ――。

「エレナ。アタシは大好きな貴女がそばにいてくれるだけで頑張れちゃうから」

　――との言葉をいただいた。

（いつもヒルデ様は余裕がある……私なんか要らないんじゃと思うぐらい）

　そんな婚約期間中のとある日のこと。
　執務室にて。
　ヒルデ様が思いがけない言葉を口にした。

「エレナのウェディングドレス、一着はアタシが作ろうかしら……？」

　首を横に傾げた彼のラベンダーアッシュの髪がさらりと揺れる。

「ヒルデ様がですか？」

「ええ、そうよ。貴女のために作ってあげたいの」

　柘榴石ガーネットのような紅い瞳で、私は覗かれた。
　息を呑むような美しさに見惚れてしまう。

（ヒルデ様は裁縫もうまくていらっしゃるから）

　淑女の嗜みも、彼はしっかり心得ている。
　刺繍だけでない。精緻な細工を施したアクセサリーを作ったりするのも得意だ。

（とにかく器用な御人）
　
　書類を持つ長くて綺麗な指に、ついつい目を奪われた。
　けれども勤務時間内だ。結婚式の話を仕事中におこなうのも良くないだろう。はっと身を引き締めた。

「ぜひ、仕事終わりにでもお聞かせ願います」

　私の返事を聞くやいなや、なぜか彼は机をごそごそ漁る。引き出しから何かを取り出した。

「じゃあ、さっそく今から測っちゃう」

　彼の手にはメジャー。

「え？」

　突然の申し出に、私は唖然となった。