【R18】護衛対象はオネエな王子様――溺愛王子は夜、獣に豹変する――

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　覚悟を決めた、その時――。
　扉の向こうで剣戟の音が聴こえた。
　部屋の中の騎士達が狼狽する。

「なんだ、いったい！？」

　――扉が吹き飛んだ。

　突風でも起きたのか――？

　木々が散乱する。

（何――？）

　視界の端で銀が閃いた。
　男のくぐもった声が聴こえる。同時にドサリと倒れる音がした。

「な！？　貴方は……」

　私の上に跨るレインが呻く。
　現れた人物に目を奪われた。

（あ……――！）

　舞うように優雅な剣なのに、一人ずつ的確に敵を射止めていく。
　翻るラベンダーアッシュの髪と白いフロックコートが――さながら蝶のように翻る。

「ひっ……」
　
　だが、屈強な男たちを射抜く柘榴色の瞳は血のように紅く冷たい。

「アタシの大事なものに触れようだなんて、代償は大きいわよ」

　王子の登場。
　しかも、彼の腕が強いことで皆が悲鳴を上げる。ぶるぶると怯えはじめる者もいた。

「エレナとの剣の稽古の時は、そんなに強い感じはしなかったのに……」

「身のこなしは軽やかだし、急所の狙いが的確過ぎる……」

（ヒルデ様がこんなに強いだなんて……）

『ネイルが剥げちゃうから、剣の稽古はちょっとで良いのよ』

　いつもそんなことを言っていたことを、ふと思い出してしまった。

「あら？　もうちょっとアタシに本気出してかかってきてくれても良いのよ？」

　ウインクしながらヒルデ様は周囲を挑発する。
　しかし、もう戦意喪失してしまっている者達ばかりだ。
　怯える男たちに向かって、レインが叫ぶ。

「そいつが王子だなんて証拠はない！　皆で一斉に挑んで、そこの女男を倒せ！」

　部屋の中に破落戸達も現れた。