上 下
4 / 31

4

しおりを挟む



 翌日。
 少しだけ落ち着かない気持ちを抑えながら、任務に当たっていた。

「あら? なんだか機嫌が良いわね、エレナ」

「はい。分かってしまいますか?」

「ええ、もちろん。アタシ、エレナのこと、いつも見てるから」

 そうして、昨日、ついに念願叶って飲みに誘われたことをヒルデ様にお伝えした。
 女性としても騎士としても、いつも背を押してくれるヒルデ様。
 当然、喜んでくれると思ったのだが――。

「危なくなぁい?」

「え?」

 ヒルデ様を見ると剣呑な光が宿っている。

「だって男たちの中に女一人でしょう? いくら貴女の腕が良いからって、賛成は出来ないわ。しかも飲みの場なんでしょう?」

「そう……でしょうか……? だけど、飲みに誘われたのは初めてで……!」

 この機会を逃したくない。

(男女問わず、騎士として対等に扱われる良い機会だし、新たな情報だって入手できるかもしれない)

 その時、突然――視界が反転した。
 急すぎて思考が追い付かない。
 新手の敵でも現れたのかと思ったが違う。

「え……?」

 気づけば、ソファの上、ヒルデ様に組み敷かれていたのだ。

(あ……)

 何をふざけたことを――。

 そう言って押しのけようとしたのだけれど――。

(力が強くて出来ない……)

 私の身体の上に跨ってきているヒルデ様が、蠱惑的な唇を開く。


「だったら……」


 いつになく彼は妖艶な雰囲気を漂わせている。



「――の腕を振りほどいていけよ」



 そこには――男性の顔をしたヒルデ王子がいたのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。

水鏡あかり
恋愛
 姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。  真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。  しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。 主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。

【R18】仏頂面次期公爵様を見つめるのは幼馴染の特権です

べらる
恋愛
※※R18です。さくっとよめます※※7話完結  リサリスティは、家族ぐるみの付き合いがある公爵家の、次期公爵である青年・アルヴァトランに恋をしていた。幼馴染だったが、身分差もあってなかなか思いを伝えられない。そんなある日、夜会で兄と話していると、急にアルヴァトランがやってきて……? あれ? わたくし、お持ち帰りされてます???? ちょっとした勘違いで可愛らしく嫉妬したアルヴァトランが、好きな女の子をトロトロに蕩けさせる話。 ※同名義で他サイトにも掲載しています ※本番行為あるいはそれに準ずるものは(*)マークをつけています

〖完結〗ヒロインちゃんは逆ハー狙いのようですから、私は婚約破棄を希望します。〜私の婚約者は隠しルートの攻略対象者〜。

つゆり 花燈
恋愛
私はどうやら逆ハーエンドのある18禁乙女ゲームの世界に転生したらしい。 そして私の婚約者はゲームの悪役令息で、かつヒロインの逆ハーが成立したら開く、隠しルートの攻略対象者だった。そして現在、肉食系ヒロインちゃんは、ガツガツと攻略対象者を喰い散らかしている真っ最中。隠しルートが開くのはもはや時間の問題みたい。 ハッピーエンドの下品系エロなラブコメです。 ※タイトル変更しました。 ※肉食系ヒロインちゃんシリーズです。 ※悪役令息な婚約者が好きすぎて、接近するとすぐに息が止まるし、過度に触れ合うと心臓発作を起こしそうになる、めちゃくちゃピュアで駄目な主人公とその駄目さを溺愛する婚約者のお話。 ※小説家になろうのムーンライトノベルズさんで日間総合、各部部門のランキング1位を頂いたお話です。

【R-18】嫁ぎ相手は氷の鬼畜王子と聞いていたのですが……?【完結】

千紘コウ
恋愛
公爵令嬢のブランシュはその性格の悪さから“冷血令嬢”と呼ばれている。そんなブランシュに縁談が届く。相手は“氷の鬼畜王子”との二つ名がある隣国の王太子フェリクス。 ──S気の強い公爵令嬢が隣国のMっぽい鬼畜王子(疑惑)に嫁いでアレコレするけど勝てる気がしない話。 【注】女性主導でヒーローに乳○責めや自○強制、手○キする描写が2〜3話に集中しているので苦手な方はご自衛ください。挿入シーンは一瞬。 ※4話以降ギャグコメディ調強め ※他サイトにも掲載(こちらに掲載の分は少しだけ加筆修正等しています)、全8話(後日談含む)

彼を焦らしたらやり返された

山吹花月
恋愛
欲情した彼を焦らしたら仕返しされた話。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

騎士様、責任取って下さいな~淫紋聖女はえっちな小悪魔女子なのです~

二階堂まや
恋愛
聖女エルネは護衛騎士ヴェルナーと夫婦同然の暮らしをしているが、結婚して欲しいとは中々口に出せない。 それに加えて彼女は、近頃性欲が満たされないことに悩んでいた。エルネは人としての三大欲求が満たされていないと強い魔力を使えないため、それは国のために力を使う彼女としては由々しき事態であった。 自らの欲求を満たすためにエルネは身体に淫紋を付けるが、それを見たヴェルナーに怒られてしまう。 そして彼は、責任を取るべく肉体的に彼女を満足させると言い出して……? 関連作品 「騎士様に甘いお仕置きをされました~聖女の姉君は媚薬の調合がお得意~」

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

処理中です...