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第4話 ただの、ご近所さん……? side百合
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しおりを挟む鼻先が固い何かにぶつかってる。
え、もしかして……コワモテイケメンの胸板で……。
そう、私は、彼に抱き寄せられていたのだった。
しかも――。
「ほら、泣きたいなら泣けよ……周りからは見えないようにしてやるから」
そう言って、私の頭を撫でて来たのだ。
「う、うえっ……」
もうそこで一気に涙腺は崩壊。
生まれたての赤ん坊かっていう位、私はオンオン泣いてしまった。
泣いている私を黙って彼は抱きしめてくれて……。
なんだか胸が温かくなっていく。
次第に涙が止まって、私はそっと彼の胸板から離れた。
そうしたら、コワモテイケメンがズボンのポケットをゴソゴソしはじめる。
「ほら……これ」
そうして、手渡してきたのは――。
ぐちゃぐちゃのハンカチ。
だけど、その気持ちが嬉しくって……。
「ありがとうございます」
思わず私は笑顔になった。
すると、なぜか相手がそっぽを向く。
「ああ、まあ、気にするなよ――悪いな、ぐちゃぐちゃのハンカチしかなくて」
「いいえ、嬉しいです。あ、そうだ! 案内ありがとうございます! たぶんこの近くです。ハンカチ、今度洗って返しますから!」
「ああ、まあ、別に洗ってくれるんなら、助かる……ちょうど俺ん家の近くで良かったな」
「はい、本当に奇遇でしたね」
「そうだ、俺、そこのコンビニで飲み物買いに行こうと思っているが……お前をちゃんと案内しようか?」
「いいえ、何から何まで頼りすぎるわけにはいきません! ありがとうございました……! すごく助かりました、ここまでで大丈夫です」
「え? ああ」
少しだけ残念そうにこちらを見ている気がしたけれど……。
これ以上甘えても良くない。
「まあ、同じ学校な上に近所のよしみだ。何か困ったことがあれば言ってくれて構わない。じゃあな」
近所のコンビニに向かって歩く彼の背中を見送った。
途中、彼が前を向いたまま、手をひらひら振ってくる。
なんだか、ドキドキして胸がじんわり熱くなるのは、なんなんだろう。
「あ! そういえば、あの人の名前聞き忘れた!」
そんなことを思いながら、私は瀬戸さんの家へと急いだのだった。
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