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19(アルファポリス版)
しおりを挟む「何の話だ? メイベル、お前はあの書類の中を見たんだろう?」
「ええ、先ほどの書類ですか? 一ページ目を見ました」
「それ以外は?」
「一ページだけですよ?」
すると、ギアスの瞳が海のように揺れ動く。
「何……? 本当に……一ページ目だけだというのか?」
ギアスは昔に比べると疑り深くなってしまったのか、訝し気な表情をこちらに向けてくる。
「ええ、次のページ以降を覗く前に、ギアスが現れましたので」
ギアスが眉根を引き絞って険しい表情となった後、ぎゅっと唇を噛み締める。
『だとしたら、俺は勘違いでメイベルにあんなことやこんなことを強いてしまって……だが、ちゃんと謝らなければ……謝って許してもらえるものだろうか……?』
すると――
「そうだったのか、すまない。お前があまりに中身に詳しいものだから、勘違いで突っ走って悪いことをしてしまった」
「勘違い?」
ギアスの心の声には気づいていないふりをして、会話を嚙合わせるべく、互いの情報を擦り合わせていくこととする。
「メイベルが一ページ目しか見ていないのだとしたら、もしや、そこだけを読んで俺から婚約破棄されると勘違いしたんだろうか?」
「え? ええ、だって私の名前が書いてありましたし……わざわざ悪人にならなくても、私から解消すると言えばいいものだと思い……」
どうやら、ギアスは私に書類数枚に目を通されたと勘違いしたようだ。
そうして、私がどんどん想像を膨らませていたら、たまたま魔力の干渉が起こって、彼の声が聴こえるようになって……というのが今回の流れのようだ。
「だとしたら、誤解ですまなかった」
いつもは無表情な彼が、心底申し訳なさそうに謝ってくる。
「いいえ、突然だったので驚いてしまいましたが、私は大丈夫です」
「だったら、婚約解消の話は……?」
「もちろん、なしです」
「そうか、お前がそう言うのなら」
キリリとした表情で返してきたギアスだったが……
『良かった! メイベルに嫌われてなかった! 本当に良かった!! 婚約継続だ!!』
心底嬉しそうな彼の声が聴こえてきて、なんだか私も嬉しくなった。
(やっぱり、ギアスはちゃんと私のことが好きなの……?)
ドキドキして気になってくる。
「それにしても、だったら、ちゃんと教会までとっておきたかったのに……」
ギアスは何やらぶつぶつ言い始めた。
「?」
すると、ギアスが私に真摯な眼差しを向けてくる。
これまでに見たことがないくらい真剣なものだから、ドキドキしてくる。
そうして――
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