【R18】寡黙で不愛想な婚約者の心の声はケダモノ

おうぎまちこ(あきたこまち)

文字の大きさ
上 下
13 / 28

13※(アルファポリス版)

しおりを挟む

 パクパクと金魚のように口を開いていると、ギアスが淡々と告げてきた。

「読んでみろ」

「この内容を……き、聞かれても、良いのですか!?」

「ああ、むしろお前の口から言ってもらいたい」

 その時、彼が視線をちらりと天井に向けた。
 私はハッとする。

(天井裏にスパイが隠れているというの……!?)

 動揺を気取られぬように、深呼吸をこれでもかといわんばかりに繰り返す。
 そうして、覚悟を決めると一息に告げた。

「『ギアスはメイベルに』……」

「続きを読め」

「『服を脱げと命じた。そうして、メイベルは生まれたままの姿になることを決意する。』……っ……」

 顔から火が拭き出そうなぐらいに真っ赤になるのが自分でも分かる。
 じっとギアスがこちらを見てきている。

『出来ないのなら無理強いはしないつもりだが……メイベルの脱衣……子どもの時に脱ぎ着を手伝って以来だな……服を着たままでも十分破廉恥な体形に育っているというのに……このまま脱がれたら、俺は……理性が……保て……』

 出来ないのなら無理をするなという視線に感じたし、謎の声も重なってくる。

(ちゃんとここで半信半疑のギアスに従順な姿勢を見せなければ……)

 恥ずかしすぎて死にそうだったが、ベッドの上にすっくと立ちあがると、肩先からシュミーズの紐ごとドレスをしゅるりと落とした。
 ちらりとギアスを見るが無表情なままだ。

(じっと見られるのは恥ずかしい……)

 相手からの視線を感じていると全身が茹だっていくようだ。

『まさか、本当に脱ぐとは……国のために……メイベル……お前というやつは……なんて意地らしいんだ……! ああしかし、これは据え膳食わぬは男の恥! だが、婚前に王女に手を出したとなれば罰せられ……いいや、メイベルと一つになれるのなら、罰せられても構わない……!』

 下着だけの格好になったが、そっと足先まで降ろして、シナリオ通り生まれたままの姿になった。恥ずかしくなってその場にしゃがみ込んで、ぎゅっとアルマジロみたいに丸まった。

「ちゃ、ちゃんと脱ぎました……」

 ちらりとギアスに視線を向けると、先ほどと同じく正座をした姿勢のまま固まっている。
 天を振り仰ぐとポツリと呟く。

「神々しいな……」

 彼がポツリと何か言ったようだが、さっぱり聞こえなかった。

(もしかして、天井裏のスパイを見張っているの?)

 相手は女性スパイとはいえ、私の裸が何者かに見られないように気を遣ってくれているのかもしれなかった。

『くっ……こんなに美しい女性に育っているのは想定外だった……今ので果ててしまうところだった……』

 やっぱり何かおかしな音声が聴こえて仕方がない。
 そんな中、ギアスがキリリとした表情をこちらに向けてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

騎士団長の幼なじみ

入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。 あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。 ある日、マールに縁談が来て……。 歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

処理中です...