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12(アルファポリス版)
しおりを挟む彼はベッドの端まで飛んできていた別の紙を拾うと、ベッドの上で正座して膝を突き合わせてくる。そうして、咳ばらいをすると私にその紙を掲げてきた。
「改めて、お前の覚悟を問おう。これをやれるか? 王女のお前に。できないだろう?」
何やら先ほどからギアスの表情が緩んだり締まったりしている気がするが、きっと気のせいに違いない。
『できないと言われても仕方ないが、できますと言ってもらった方が、俺としては良いこと尽くめというか……俺の知っているメイベルならば、ムキになってできると言ってくるか……』
あとちなみに彼の声のようなものも、やたらと聞こえてくる。
(幻聴……? 医術士に診てもらった方が良い? それとも何らかの魔力の干渉……? 隣国のスパイは魔術師……?)
……とにかく昔から「出来ない」と決めつけられるとムキになってしまうのは、謎の声の言う通りだ。
「絶対にできます。私はメイベル・オーヴェスト。ちゃんと貴方のシナリオ通りに動いて見せますわ」
――隣国の敵を炙りだすため、引いてはギアスの幸せのために。
けれど、どこかで盗聴されている危険性も危惧して、大事な目的については添えなかった。
「……分かった」
ギアスがコクリと頷く。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
ちゃんと協力すると告げたのに、わざわざベッドに連れてこられたのは、ギアスがまだ私が本気で言っているのか疑っているからに違いない。
(絶対にシナリオ通りに動いてみせます)
一度大きく深呼吸をすると、キッと書面を睨みつける。
だが、その瞬間、雷にでも撃たれたかのような衝撃が走った。
(え? え? え? 気のせいでしょうか? ま、まさか……)
視線を這わせると同時に顔が一気に紅潮していく。
「な、な、な」
書類に記載されていたのは――
(……だって、この内容は……ギアスと私の……!)
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