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そうは言われたものの、勝手に目が文字を追ってしまう。
本の読みすぎで鍛えた眼が、ある一枚の文書の一文を拾う。
「え……!?」
思わず、目を真ん丸に見開いてしまった。
そこに書かれていたのは――
『隣国の襲撃にあったメイベルを救うべく、ギアスは獅子奮迅の活躍を見せた』
私が生まれてきてから、隣国からの襲撃事件は起きていない。
(そんな……そういえば、珍しくギアスはご令嬢に微笑みかけていたわ……まさか……!!)
私はとある事実に行きあたり、愕然としてしまった。
目の前の婚約者の不貞を疑ったことを後悔して、血の気が引いていく。
(彼女は隣国のスパイだったというの……!?)
言われてみれば、あの令嬢はギアスのことを好いていそうなわりには、私に対して珍しく牽制をかけてはこなかった。けれども、私とギアスが一緒のところを、やけにニヤニヤした目で見ていた気がする。
だとしたら、彼女こそが隣国のスパイ……?
そうして、ギアスは敵である彼女を欺くためにあのような書類を作成していたのではないか?
(そうよ、だとしたら、私のとんでもない勘違いで……)
隣国からのスパイを欺くために今度おこなわれる婚約披露パーティで、わざと私に婚約破棄宣言をして、私を安全な場所に隠そうとしたのだとすれば……!
(私はギアスの気持ちを誤解して……婚約解消を告げてしまったのかもしれません)
ギアスだって、まさか件の紙が私に拾われるなんて想像していなかったのだろう。
けれども、私が婚約解消を告げたことによって、敵を炙りだす作戦が無に帰してしまいそうになっている。
だから、悲壮な決意をして、今私をここで押し倒してたりしたのかもしれない。
普段は無表情の彼の憂い顔を見ていたら、そんな気がしてきた。
ふと、彼の執務机に飾られた赤いレンテンローズが目に入って、またしても何か閃く。
(こんな風に綺麗な花を部屋に飾ってくれる特定の女性がいて……だけど、ギアスは妹のような私を助けるために、本当に愛する女性のことは胸に秘めて、私と嘘の婚約関係を結んで……彼が独断で私を振ったことにするために、わざと私を皆の前で振って……)
ギアスが嘆息すると、私に向かって声をかけてくる。
「メイベル、やっと落ち着いてくれたのか……さあ、続きは……」
彼の手が私のスカートの裾をたくし上げた、その時――
「待ってください、ギアス!」
本の読みすぎで鍛えた眼が、ある一枚の文書の一文を拾う。
「え……!?」
思わず、目を真ん丸に見開いてしまった。
そこに書かれていたのは――
『隣国の襲撃にあったメイベルを救うべく、ギアスは獅子奮迅の活躍を見せた』
私が生まれてきてから、隣国からの襲撃事件は起きていない。
(そんな……そういえば、珍しくギアスはご令嬢に微笑みかけていたわ……まさか……!!)
私はとある事実に行きあたり、愕然としてしまった。
目の前の婚約者の不貞を疑ったことを後悔して、血の気が引いていく。
(彼女は隣国のスパイだったというの……!?)
言われてみれば、あの令嬢はギアスのことを好いていそうなわりには、私に対して珍しく牽制をかけてはこなかった。けれども、私とギアスが一緒のところを、やけにニヤニヤした目で見ていた気がする。
だとしたら、彼女こそが隣国のスパイ……?
そうして、ギアスは敵である彼女を欺くためにあのような書類を作成していたのではないか?
(そうよ、だとしたら、私のとんでもない勘違いで……)
隣国からのスパイを欺くために今度おこなわれる婚約披露パーティで、わざと私に婚約破棄宣言をして、私を安全な場所に隠そうとしたのだとすれば……!
(私はギアスの気持ちを誤解して……婚約解消を告げてしまったのかもしれません)
ギアスだって、まさか件の紙が私に拾われるなんて想像していなかったのだろう。
けれども、私が婚約解消を告げたことによって、敵を炙りだす作戦が無に帰してしまいそうになっている。
だから、悲壮な決意をして、今私をここで押し倒してたりしたのかもしれない。
普段は無表情の彼の憂い顔を見ていたら、そんな気がしてきた。
ふと、彼の執務机に飾られた赤いレンテンローズが目に入って、またしても何か閃く。
(こんな風に綺麗な花を部屋に飾ってくれる特定の女性がいて……だけど、ギアスは妹のような私を助けるために、本当に愛する女性のことは胸に秘めて、私と嘘の婚約関係を結んで……彼が独断で私を振ったことにするために、わざと私を皆の前で振って……)
ギアスが嘆息すると、私に向かって声をかけてくる。
「メイベル、やっと落ち着いてくれたのか……さあ、続きは……」
彼の手が私のスカートの裾をたくし上げた、その時――
「待ってください、ギアス!」
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