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しおりを挟むギアスとの婚約が決まって以降、色んな令嬢たちが毎日のように私に牽制をかけてきていた。「地味なメイベル姫じゃあ、ギアス様に合わないわ」や「私の方がギアス様の戦場での様子を知っております」とか、王族に対して不敬で処罰されることも恐れない彼女たちに愕然としながら、日々を過ごしていた。
(牽制をしかけられるのは、正直苦痛だけれど、真面目なギアスのことだから、心配ないと信じています)
そんな風に思っていた矢先、ギアスが他の文官令嬢と談笑をしているところを見てしまったのだ。
(あんな笑顔、私に見せたことありませんのに…)
あまりの衝撃に、柱の陰から震えて見ることしかできなかった。
彼らの話が終わってからギアスの元へと向かって、何を話していたのか聞こうとしていたら、彼の抱える書類の束から一枚の紙がひらりと落ちてきた。
しゃがんで手に取ると、覗き見るつもりはなかったのに、文字が目に飛び込んでくる。
そうして、中身を見た私はショックを受けた。
『婚約破棄するためには』
衝撃的な見出しからはじまり、婚約披露パーティでギアスが私に向かって婚約破棄宣言をするまでの流れの台本のようなものが記載されていたのだ。
(この流暢なペン字、間違いなくギアスの字。婚約してから、何にも進展がなかった。だから、ギアスは私とは別れるつもりなのでしょうか……?)
今にして思えば、ギアスが私を妻にと告げてきたという父の発言があやしく感じてくる。
だって、本人からは何も言われていないのだから。
それまで見ないふりをして封印してきた不安が、堰を切って溢れはじめた。
(こんな風に婚約披露パーティで別れを宣言されるぐらいなら……いいえ、それ以上に彼を縛り付けてしまうぐらいなら、私の方からいっそ婚約解消を告げて、彼を自由の身にしてさしあげたい)
愛する人にいやいや結婚してもらいたいとも思わないし、かといって、皆の前で派手に振られるつもりはない。
そう決意し、ギアスの部屋を訪れたのだ。
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