【R18】あなたには帰る場所がある。だから、愛しているとは言えない。

おうぎまちこ(あきたこまち)

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5 4人の邂逅

46 マリーン

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 父の仕事に着いて、幼いマリーンがへき地に着いた際に魔物に襲われた過去がある。
 その時、艶やかな黒髪の女性がマリーンのことをかばって……しばらくして死んだのだ。
 後ほど救護所にて、助けてくれた女性に縋りつく娘の姿を見て――。

(私が死ねば良かったのに……)

 胸がズクンズクンと痛んだ。

(なんで私みたいなダメな子が生きのびてしまったんだろう……)

 大好きだった母親が死んで、貧乏で金がない家でお父様と使用人たちに囲まれる日々は悪くない。
 だけど――ある時、メイドたちがこんな話をしていたのだ。

『せっかく跡取りに恵まれたと思ったら、女の子のマリーン様。マリーン様の母親はマリーン様をさっさと生んで死んでしまってさ……父親は後妻は取りたくないというし、もう子爵家はお家断絶だね……マリーン様が女でなく男だったら良かったのに……』

 ――女でなく男。

『そうそう。それか、もういっそマリーン様が生まれてきてなかったら、奥方様も生きたままで、別の男児に恵まれていたかもしれない』

『違いないわね。だけど、マリーン様はこの間の魔獣の時だって、生き延びたじゃない?』

『そうだったわね。本当、誰かを犠牲にして生きていく――あれこそ魔性の生き物ね』

 くすくすとメイドたちが嘲笑を浮かべていた。

(なかよくしてくれていると思ったのに……)

 使用人たちからそんな風に考えられていたのかと思うと、ひどく悲しかった。

(誰かが不幸になってまで生きていくつもりなんてなかったのに……あの時魔物に食われて死んでさえいれば……なんで生き延びてしまったの……私だけが死ねば、誰かを不幸にすることなんてなかったのに……私は化け物……要らない子で……)

 幼いマリーンはずっとずっと後悔して、自分を毎日責めて過ごしていた。


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