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5 4人の邂逅
28 ミリー
しおりを挟むそうして、私が宿舎へと向かう雑木林の中を帰っていると――。
「ミリー……」
背後から愛しい青年の声が聞こえる。
振り返ると、騎士団のコートに身を包んだ美青年アイザックの姿があった。
銀朱|≪バーミリオン≫|の髪が、夕焼けの陽に揺らめく。
(あ……)
見間違いなんかじゃない……。
本人の登場に心が弾む。
同時に、離れないといけないことが分かり、哀愁で胸が苦しくなる。
「アイザック、特別任務は……片付いたの?」
特別任務だなんて嘘だ。
今朝、アイザックが愛する妻と子の元に行ったことを知っている。
「いや、まだ中途半端なままだ……」
彼は走ってきたのだろうか。
額に汗が流れ、爽やかな笑みを浮かべてくる。
「この任務が終わったら、改めて伝えたいことがあるんだ、ミリー」
心臓がドクンと鳴る。
『妻と子を大事にしたから、君とは別れたい』
そんな類の話だろうか。
ドクンドクンドクン。
不安で鼓動がおかしい。
(ちょうど異動が決まったし……もうこれ以上はアイザックとの関係は続けられない……だから、頑張って想いを断ち切らないと……)
相手に動揺を悟られないように、私は淡々と返す。
「任務とやらが終わるまでに、どのぐらいかかりそうなの? 来週明けとか?」
「まだ……しばらくは掛かりそうで……来週明けには、まだ解決していないかもしれない……遅すぎるだろうか?」
少しだけ寂しそうに微笑む彼のことを見ると、胸がぎゅっと鷲掴みにされたかのようだ。
そうして、口をついて出た言葉は――。
「ねえ、今日は今から少しだけ一緒に過ごせない?」
「今日、今から……?」
アイザックは何かを考えているようだった。
少しだけ困ったような様子だ。
(奥さんと子どもに会いにいくのね……)
胸に重しか何かでも乗せられたかのように、ずしりと重くなる。
全身もどんどん重くなって、海の中で動けなくなったような気さえしてきた。
「ミリー、まあ、あんまり夜遅くにならないなら、大丈夫で……っ……」
何か言おうとする彼の唇を、私は唇で塞いでしまっていた。
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