【R18】あなたには帰る場所がある。だから、愛しているとは言えない。

おうぎまちこ(あきたこまち)

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5 4人の邂逅

28 ミリー

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 そうして、私が宿舎へと向かう雑木林の中を帰っていると――。

「ミリー……」

 背後から愛しい青年の声が聞こえる。
 振り返ると、騎士団のコートに身を包んだ美青年アイザックの姿があった。
 銀朱|≪バーミリオン≫|の髪が、夕焼けの陽に揺らめく。

(あ……)

 見間違いなんかじゃない……。
 本人の登場に心が弾む。
 同時に、離れないといけないことが分かり、哀愁で胸が苦しくなる。

「アイザック、特別任務は……片付いたの?」

 特別任務だなんて嘘だ。
 今朝、アイザックが愛する妻と子の元に行ったことを知っている。

「いや、まだ中途半端なままだ……」

 彼は走ってきたのだろうか。
 額に汗が流れ、爽やかな笑みを浮かべてくる。

「この任務が終わったら、改めて伝えたいことがあるんだ、ミリー」

 心臓がドクンと鳴る。

『妻と子を大事にしたから、君とは別れたい』

 そんな類の話だろうか。

 ドクンドクンドクン。

 不安で鼓動がおかしい。

(ちょうど異動が決まったし……もうこれ以上はアイザックとの関係は続けられない……だから、頑張って想いを断ち切らないと……)

 相手に動揺を悟られないように、私は淡々と返す。

「任務とやらが終わるまでに、どのぐらいかかりそうなの? 来週明けとか?」

「まだ……しばらくは掛かりそうで……来週明けには、まだ解決していないかもしれない……遅すぎるだろうか?」

 少しだけ寂しそうに微笑む彼のことを見ると、胸がぎゅっと鷲掴みにされたかのようだ。

 そうして、口をついて出た言葉は――。

「ねえ、今日は今から少しだけ一緒に過ごせない?」

「今日、今から……?」

 アイザックは何かを考えているようだった。
 少しだけ困ったような様子だ。

(奥さんと子どもに会いにいくのね……)

 胸に重しか何かでも乗せられたかのように、ずしりと重くなる。
 全身もどんどん重くなって、海の中で動けなくなったような気さえしてきた。

「ミリー、まあ、あんまり夜遅くにならないなら、大丈夫で……っ……」

 何か言おうとする彼の唇を、私は唇で塞いでしまっていた。

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