【R18】祠を破壊したら、異世界で溺愛が待っていた

11

　小さい頃、私のことを迎えに来ると約束してくれていた彼。
　なんと、全知全能を司る神だという。
　日本だけでなくそれ以外、異世界だろうと、宇宙の全てを司る神。

「小さい頃に、狐の子どもを助けたことがあったけど、貴方があの狐だったの？」

「そうそう、そうなんだよ。その後、狐じゃなくて人間の姿でお前に会いに行ってただろう？　だけど、お前が引っ越したから、俺が親父から神の総代を譲り受けて最高神になるまでは待ってたんだよ。なのに、あの住職が……祠にお前をなんとか誘導できて良かったが……」

　人間形態に戻った彼がぼやいた通り、禍々しい祟りか何かだと勘違いした住職が、祠ごと男のことを封印したのだという。
　なかなか封印が解けず、いよいよ消滅しかけていたらしい、最高神なのに……
　私をなんとかおびき寄せることに成功した最高神。
　祠を破壊したと絶望した私だったけれど、どうも最高神が私に祠を破壊させるべく仕組んだものだったそう。
　ちなみに最高神の父である元最高神は、「夢は自分で手に入れろ」派の熱血タイプらしく、他の神様たちからも手助けをしてもらえなかったそうだ。

「最高神になってから初めての試練といっても差し支えなかった。黒い靄にさせられた俺は、お前に思い出してもらえない限り、人としての形を成すことができなかったんだ、許してほしい」

　最高神は私のことをぎゅっと抱きしめて哀願してきた。

「分かった、――」

　すると、すっかり大人になった彼が私に嬉しそうに子どもの頃みたいに微笑みかけてきた。

　もちろん元カレと後輩OLの二人は……彼の目の届く場所で幸せになることは出来ず、大変な目に遭い続ける一生を過ごすことになるのは――数十年後に知るのだけど……

「ああ、そういえば、どうだ？　ヨーロッパは楽しんだか？」

「ええ、楽しんだわ」

「よし、せっかくだから、お前が行きたいって言ってた異世界に今から向かうぞ！」

「今から異世界に!?」

　最高神の彼は、日本だろうと海外だろうと、宇宙だろうと異世界だろうと、どこにでも旅行に連れて行ってくれる。
　しかも旅行先では極上の日々を過ごすことができる。
　食べたいと言ったものや欲しいと言ったものをすぐに準備してもらえる。

「あかね、もうお前を絶対に離さない。出会った時から、ずっと俺にはお前だけだよ。愛している」

「ありがとう、――」

　ちなみに……

　どうも最高神な彼は、私が望む姿になるらしく……

「なんで黒い靄のままなの？」

『それはお前がこの姿の俺に身体を弄られたいからだ』

「そんなわけっ……きゃっ……」

　ベッドの上でも優しい彼は、時々黒い靄の姿に戻って意地悪をしてくるけれど……

（優しいし、気持ちが良いから、まあ良いか）

　ということで、時折黒い靄に変化する最高神の彼と――色んな世界を自由に行き来しながら、何に怯えることも苦しむこともなく……私は最高に溺愛されながら幸せな毎日を過ごし続けることになった。

　そう――。

　祠を破壊したら、異世界で最高神からの溺愛が待っていたのでした。

（終わり）