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 用意された料理はとても美味しかった。
 お腹が満腹になってくると、だんだん眠くなってきた。
 白いレースのかかった天蓋付きのベッドは大人が五人寝ても大丈夫そうなぐらい大きい。
 ベッドマットは弾力があって、乗ると体がまるで鳥のように跳ね上がった。

「ふふ、気持ちが良い」

 黒い球がふわふわ背中に乗ったかと思うと、まるでゴム紐みたいなニョロニョロが何本も伸びてきた。

「きゃっ……!」

 蛸の手とか触手みたいな感じかな?
 何本も伸びてきたそれが、私の仕事で疲れた身体を揉み解してくれる。

「わあ……すごく気持ちが良い。マッサージ屋さんみたい……きゃっ、ふふっ、気持ち良いっ……!」

 黒い光の球は、せっせと私の堅くなった身体を柔らかく解きほぐしてくれて、ものすごく気持ちが良かった。
 しばらくすると、身体がポカポカしてきて夢見心地。

「至れり尽くせりの夢で良かった。お休みなさい」

 ふかふかのベッドの中に入っていたら、とろりと夢の中に誘われていく。

 目が覚めたらきっと現実が待っているはず。
 そうしたら、元カレのことなど忘れて、仕事に打ち込むのだ。

『夢じゃない、ちゃんと約束を果たしてもらう』

 ……夢じゃない?

 約束?

 眠りに就きながら、ふと過去のことを思い出していた。

 小さい頃、神社の祠の辺りで待ち合わせをして、よく一緒に遊んだ男の子。
 
(外人さんみたいに綺麗な顔立ちで、キリっと凛々しくて元気な男の子。最初会った時は美少女だって勘違いして怒られちゃったんだったっけ?)

 すごく綺麗な男の子だけど、一人ぼっちで過ごしていたから、私が声をかけてよく一緒に遊んでいたんだった。
 和装を着ていることが多かったから、勝手に歌舞伎役者の長男かと思い込んでいたんだっけ?
 だけど、私は小学5年生の頃に引っ越さないといけなくなった。

『あかね。いつかきっと必ず君を迎えに行く、約束だ』

 彼は私に薔薇を一輪プレゼントしてくれたんだ。
 小学生ながらに気障だなと思ったんだった。
 それきり会えなくなっていた。

(あの祠、小さい頃に待ち合わせ場所にしていた祠に似てる)

『あかね』

 どこか遠くで、小さい頃に一緒に遊んだ男の子の声が聴こえた気がした。



『なんて綺麗な女性に育ってくれたんだ、お前のことをずっと大切にする。だから、早く俺のことを思い出してほしい。そうでなければ、俺はお前の前で人の姿には……』



 私は眠りに就いた。

 まさか、次に起きた時に黒い玉にあんなことをされちゃう上に、黒い玉の正体がアレだなんて思わずに……


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