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しおりを挟むけれども――。
ふわり。
「君が無事でよかった」
――私はいつの間にか彼の腕の中に閉じ込められていた。
「ファウスト様……」
本当に心配してくれているのがわかる。
慈しむように彼から私は頬ずりされた。
いつもは落ち着いた声音が、少しだけ震えている。
「……あ……ファウスト様……嘘を吐いてしまって、申し訳ございません」
「いいや、何もなくて本当に良かった。君が持ち出した被検体は、特殊な技術が施されたものだったんだ。君に何かあったら、俺は……」
俺は何だというのだろう?
その先の言葉を期待してしまう自分はいた。
――実験に支障が出てしまう?
――家事が滞ってしまう?
――助手を事故に合わせたからって、第二王女との結婚がなくなってしまう?
だけど、その答えを求める前に――ファウスト様が思いがけないことを言い出したのだ。
「さて、エミリア、スライム相手に何をされたのか、私に説明してくれるだろうか?」
「え?」
相手に、急に仕事モードのスイッチが入ってしまった。
「いつ持ち出したかだけじゃなくて……そんなことまで、言わなきゃいけないんですか?」
「君も知っているだろう? 日時や場所だけじゃなく、何があったのか詳細に聞き取らないといけない」
私はプイッと視線をそらした。
スライムで自慰行為に及んでいたことを、彼に知られたくなかった。
だけど、言い逃れ出来ない位、身体はスライムの粘液でベタベタだ。
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