【R18】ひとりえっちの現場をヤンデレに取り押さえられました。

おうぎまちこ(あきたこまち)

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「エミリア……君相手だと、わたしは情けない男になった気がするよ」

「あ、そうですか。世間では冷酷無慈悲な魔術師長と言われているはずの人なのに、ですね」

 またもやツンケンしてしまった。

(ああ、私の馬鹿……またこんな態度をとって……どうして可愛らしく出来ないの?)

 ちょうどその時、彼が腕を解いたと思うと、まるで黒豹のように滑らかな動きで私に近付いてくる。同時に、私の額に彼が繊細な指で触れてきた。

「あ……ファウスト様……」

 思いがけない出来事に心臓がドキンと跳ねる。

「エミリア、優秀な君のことだ、熱でもあるのではないかと心配したが杞憂だったようだな。疲れが溜まっているのだろうさ。さあ、もう今日の実験はもう良い。早く屋敷に戻って休みなさい」

「はい……分かりました、ありがとうございます。それじゃあ……」

 そうして、ツンツンしながら立ち去る私の背に向かって、彼が声をかけてくる。

「そうだ、被検体のスライムが1匹いないのだが、君は知らないだろうか?」

「……ええと……」

 思わず言葉に詰まる。
 少しだけ動揺したが――悟られてはいないはずだ。

(被検体のスライムは、私が実は持っている)

 私がたじろいでいると、ファウスト様が続ける。

「まあ、気にする必要はないだろう。明日までに見つけられなかったら、捜索隊に依頼するまでだ。さあ、エミリア、部屋に戻りなさい」

「はい」

 研究や仕事に関しては高い倫理観も持っており、時として厳しい彼だが……私が辛そうな時にはひどく優しい。

(当代一の魔術の使い手であるファウスト様……だけれど、他の職員たちから聞いてしまった……最近は第二王女との結婚の話が出ているんだって)

 胸がずきんと痛む。
 彼が他の女性と一緒に過ごしているところを考えると胸が軋む。

(違う、違う、別に私はファウスト様のことなんか好きじゃなくって! 尊敬する彼と一緒に働けさえすれば、それだけで良くって……!)

 誠実で優しい彼に再会して、改めて惹かれてしまっているなんて……。

 叶わない願いなのだから、気づきたくなかったのだ。


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