【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣

おうぎまちこ(あきたこまち)

文字の大きさ
上 下
3 / 6

3※

しおりを挟む



 ――サラを選ぶから、セイラ、君とは離縁だ。

(自分から離縁だと言ったのに、怖い――)

 エドガーにそう言われると思っていたのに――。

「――愛する妻に嘘を吹き込んで不快にさせる女は解雇にするよ」

 私は予想外の返答に目を見開いた。

「エドガー様、そんな……!」

(え……嘘……?)

「サラ、お前は俺と身体の関係があるように振舞ったそうだな。仕事は確かにそれなりにこなしてくれているが、俺は、俺の愛する人を傷つける存在をそばに置いておくことは出来ない。荷物を片付けて出て行ってくれ――」

 目の前のサラは、わなわなと震えている。

(エドガーは不貞は働いていなかった――)

 彼の菫色の瞳は、嘘は確かについてはいないような気がした。
 だけど、頑なになっていた私は、素直に喜ぶことが出来ない。
 サラが何かわめき散らした。

「でも、皆が噂するように、その女と結婚したのは爵位目当てなのでしょう!?」

 激高した彼女を尻目に、俯いていたままの私の顎をエドガーの長い指が掴んでくる。
 顔を彼の方に向けさせられた、その時――。

「ん……」

 彼の唇が、私の唇を覆った。
 そして、彼の舌が、私の唇を割って入り込んでくる。
 深く差し入れられた粘膜が、私の口の中の粘膜を這う。
 舌が歯列をなぞってきて、ぞくぞくとした感覚が背筋を這いあがってきた。
 
(いつもなら、重なるだけの口づけしかされないのに――)
 
 しばらく、くちゅくちゅとした水音が室内に響き渡った。
 唇が離れる時、舌同士が絡み合ったことが分かる銀糸が伸びて、恥ずかしくなる。
 そうして、サラに向かってエドガーが告げた。

「周りが何と言っているのかは知らないが――俺は、学生時代に、心優しいセイラと出会って以来――他の女性に目を向けたことなど一度だってない」

 彼から聞く初めての言葉に、私の胸に風が吹き抜けたような錯覚を覚える。
 火が灯ったように、心が温かくなっていく。
 サラは悔しそうに地団太を踏むと、部屋の外に出ていったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

大きな騎士は小さな私を小鳥として可愛がる

月下 雪華
恋愛
大きな魔獣戦を終えたベアトリスの夫が所属している戦闘部隊は王都へと無事帰還した。そうして忙しない日々が終わった彼女は思い出す。夫であるウォルターは自分を小動物のように可愛がること、弱いものとして扱うことを。 小動物扱いをやめて欲しい商家出身で小柄な娘ベアトリス・マードックと恋愛が上手くない騎士で大柄な男のウォルター・マードックの愛の話。

処理中です...