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第9話_1 極悪非道な継母

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「おほほ、ヴィオレッタ! 今度こそ、このわたくしが貴女を殺して差し上げてよ!」

 ブルネットの巻き髪に、派手な出で立ちをした美人――わたしの継母が、シュタインの屋敷の中に現れたのだった。
 寝室に出現した継母の背後には、しかしながら誰も控えていない。
 シュタインとわたしのいる部屋の中には、倒れた騎士たちがうずたかく積まれている。身体の動ける騎士たちは退散してしまっていた。
 わたしは継母を鼻でふんと笑ってやった。

「あんた、やっぱり馬鹿なの? もうあんたを助けることのできる騎士はいないわよ」

 継母は憤慨する。

「やっぱり生意気な娘だね、ヴィオレッタ! わたくしの最高傑作である、あの毒薬が効かないなんて、よほど運の良い娘だよ!」

 彼女はあっさりと、自身の悪事を自供した。

(展開が早くて助かるわ……)

 どこかの山姥のような顔をしながら、継母がわたしを睨みつけてくる。
 荒い呼吸を落ち着けながら、彼女はわたしにまたも同じ毒薬を差し出してきた。

「ほら、死にたがりのヴィオレッタ。この間よりも毒の量を増やしている。これならお前でも死ねるはずだよ。わたくしがお前ごとき娘の『天国に行きたい』という願いを叶えてやろうとしているんだ、感謝しな――」

 彼女の提案を、わたしはきっぱりと断った。


「いやよ――死に方はわたしが決めるわ――わたしは、この人の上に乗って腹上死するんだって決めたんだから――それに、この男の人、わたしがいないと何も出来ないんですもの」


 へたりこんでいる金髪碧眼眼鏡のイケメン変態シュタインを指さしながら、わたしは継母に宣言した。
 ちなみに彼は、先ほどの騎士との戦闘で疲れたせいか、床にへたり込んでいた。

「ヴィオレッタ――」

 ちょっとだけ子犬みたいに庇護欲をそそる表情で、シュタインがわたしの方を見ていた。

(情けない変態のくせに――)

 祖国から出てくる前に、継母から毒薬を手渡され、死にたかったからとそれを飲んだわたしだったけれど、今となってはそんな死に方はしたくないと思うようになった。
 全然何も出来ないし、気持ち悪いし、趣味も悪いんだけど、この男にはわたしがついてなきゃダメよね、なんて思ってしまっている。

(ちょっとだけ、もうちょっとだけ、シュタインの世話をするのも悪くないわ――)

 そんなことをわたしが思っていると、継母がまたもやあっさりと自身の悪事を白状する。


「しかたないね、女狐ヴィオレッタ! あんたの母親と同じように、わたくしが毒を飲ませてあげるわよ――!」

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