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第2話_2 出会いはふとした瞬間※
しおりを挟む芝居がかった口調で、そんなことを言い出したので、正直ちょっとどころかかなり引いている。
(というか、私の身体の上で泣くのやめてほしい。それにしてもこの人、もしかして使用人たちの噂で聞いたことがある――)
「――死体愛好家――ネクロフィリア――?」
死体を見て性的に興奮する類の人間がこの世には存在するらしい。
「なぜお前に、私の性癖が分かった――?」
蒼い目を見開きながら、王子系イケメンがそんなことを言い始めた。
「ちょっと考えれば――まあ、そうかなって――」
男はわなわなと震えている。
「これだから、生きている女は小賢しい――」
わたしの狭穴から脱出できない間抜けな男が、そんなことを言う。
死んでしばらくしたら、死後硬直が始まるが、穴に関しては弛緩していく――。
だから、彼も脱出自体は出来たかもしれないけれど――。
(はあ、こんな事態になるなんて――なんだかすごく大きいものが脚の間にはさまってる――やっぱり早く死んで楽になりたいわ)
その時、わたしの頭に天啓がひらめいた。
(すごく大きい――この人の――)
組み敷かれた彼女は、嬉々として、上に乗る男に声をかける。
「ねえ――わたしはヴィオレッタ。あなた、名前はなんていうの?」
「なぜ俺が、お前のような得体の知れない女に、高貴なる名を告げないといけない――?」
(それはこっちのセリフだよ)
わたしは回答する代わりに、膣にぎゅうっと力を込める。
「い――いたっ、いたい、いたい、痛い」
青年は情けない声をあげた。
「わ、分かった、答えるから、い、いた、いた――」
わたしは力を緩めた。
涙目になった彼が、眼鏡を持ち上げながら告げる――。
「――シュタイン――」
彼女はふぅんと、繋がっている彼を眺めた。
「シュタイン、貴方、『最愛の奥さん』を取り返したいのよね? 死んだ私のことだけど――」
「できることなら、そうしたいのはやまやまだが――さすがに俺は殺人をするのは趣味じゃな――」
そこまで言いかけた彼に、私はこう告げることにした――。
「だったら、今ここで――あなたの上で、私を腹上死させてくれる――?」
――と。
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